「グリーングリーン」総評。
あるいは、シナリオとゲームということ。
他のSS書きさんにも勧められ、ようやくプレイ。相変わらずの如星的周回遅れプレイっぷりで
(^^;;、まったく今更の感もありますが、全キャラシナリオ終了しましたので思うところをまとめてみました。
この章は一応
ネタバレなしです。
ひと夏のドタバタ、というトーン
これこそがこのゲームの強力な印象であり、よく描き込まれてた点ですね。
特に
サブキャラによって織り成されるトーンは秀逸。男性陣が個性派揃いで、これにみどり、小みどり、双葉辺りを加えて、見事に学校ドタバタモノを演出してます。
その中でもやっぱ目を引くのは男性陣ですねぇ。
ギャルゲの
「男性友人」というと、妙にいい奴で澄ましてて何故か親友で恋愛しなさそうに見えて実は1人だけ好きッ!という超典型パターンのご登場がほとんどなんですが、そんなステレオタイプを破壊する個性派が3人も。ああ、学生の頃こんなアホやって笑ってたなぁ、という空気を楽しめましたね。同様に、女の子への「飢えっぷり」も「らしく」てヨシ。妙にプラトニックで精神論的な恋愛を高校生が展開する、という違和感がなくて良かったですね〜。
アニメっぽい絵柄もこの性格・動きの派手なキャラたちに合ってます。声優さんのレベルが全員非常に高く
(注1)、トーンを壊さずに違和感なく没入できるのも嬉しかったですね。軽快な音楽も味を添えてますし、全体としてのトーンがばっちり仕上がってます。イイ!
注1:レベルが高い、がどれぐらいを指すのか。
私の観点からだと、例えば君望は決して高いとは言えませんね(メインヒロイン3名はともかくとして)。メインヒロインですら、遙以外は力量の問われる泣き、笑い等に難がありました。グリグリは男性を含め、泣く、笑う、叫ぶといったシーンも問題なくこなしていたのが印象深いです。
シナリオ全般傾向について
全体として、トーンのインパクトに比べると、シナリオはパワー不足というか、書き込み不足の感が否めません。プレイ時間自体も短いので仕方ないのかもしれませんが……。プロット自体はいい物が多いだけにちょっと残念ですね。
書き込みで言うなら、例えばなかなか巧く設定されている「鐘ノ音先生」辺りをもっと使ってみるとか、森の中の木造校舎という点を生かしてみる
(炭坑を使うより良かったのでは)など、下地はあったのに活かせていない気がします。
あと、これの克服に成功している作品自体少ないのでグリグリに限ったことではないんですが、Hシーン浮いてますねぇ。絵柄もこの手のエロには向いていませんでしたし、逆にもう少し淡白でも文句はなかったんじゃないでしょーか。
ゲームシステム等について
目新しい機能がない故に、特にアラがあるというわけではないですが……。直前に君望のような作り込まれたシステムを触っていたせいもあるでしょうが、ちょっと寂しいですねぇ、うーん
(><)。グラフィックスには拘らないので画像モードがないことなどは気にならないのですが、基本的なところとしては思いつきを列記するだけでもこれだけありますね。
・読み返しができない
・メッセージスキップをしていても日付表示エフェクトが掛かったまま
・テキストが長くなった際のスクロール処理が不自然
・EDが粗いMPEGムービー(T_T)
最後のムービーは何とかならなかったんでしょうかね……。展開しようとしてるシーンはいいんですが、解像度が粗くて興醒め。今時のマシンパワーを考えれば、せめて640x480以上の高解像度でエンコードするか、あるいはこれぐらいプログラムで実現して欲しかったですねぇ。
と、後半愚痴ばかりになってしまいましたが……。
ともかく、全体として作りが甘い感は否めませんが、これだけのトーンを実現している点は高評価。以下レビューするシナリオもプロットレベルでは良くできてますし、各ヒロインのキャラが立っているのも見逃せません。プレイ時間が短いが故にサクサク遊べてお手軽な点を考えれば、結構良い作品ではないでしょうか。
総合点:「買うに値する」「1巡プレイするに値する」でした。
如星による
独断と偏見によるキャラ萌え評価 各シナリオ「感想」と。
SS的視点からも書けるといいんですがねぇ……
シナリオの話なので
総ネタバレです。
千歳みどり
電波だけど充分可愛いぞ、みどりさん。
ありがちな謎惚れかと思いきや、SFな設定、小みどりを巻き込んだループバック。SF好きとしてはなかなか興味深いですね。
ただ……やはり書き込みが足りません。
これだけ壮大な
(?)設定を使っているのに、小みどりを使った伏線が少ない上に平凡。もっと贅沢に、みどりにとってこの夏が「2度目」であることをアピールしても良かったんじゃないでしょうか。
あと、
なまじSFなので、「時空航行能力がある癖にテラフォーミングもまともにできないの?」とか「惑星移民しているなら、大気編成順応技術はもっと発達していそうなもんだけど……」等のツッコミをしたくなってしまう、という
副作用(^^;;もありましたね。
でもいいのッ!
純粋にキャラとしては凄く好きです。わーいっ。
如星がシナリオに依存しない、キャラ主体でSSを書きたくなった珍しいケースです。「夏への扉」辺りを第2モチーフにしてみると面白いかもなー。
飯野千種
純粋にいい話だったですね。
主人公に惚れた理由は今ひとつ謎ですが、グリーングリーンとしての行動の辺りといい、要するに本人は恋愛慣れしてないんですなぁ、可愛いこと。
(ぉぃ)
特に千種シナリオと言うわけではないんですが、轟阻止作戦のくだりが非常に笑えました
(^^;; 男女の亀裂を修復した直後にこのイベントを持ってくる辺りが、やっぱ巧いなぁ、と。
しかしみどりシナリオにしてもそうなんですが、
再会まで早すぎ。まぁあまり期間を置くと、君望のようなケースもあり
(以下略ごほごほ)。でもとにかく「走る」って辺りが、ゲームトーンと合ってて小気味良かったシナリオでした。
朽木双葉
うーんと。えーと。……( ´_ゝ`)。
勝気でお嬢様で実は奥手で妙にロマンチスト。あまり好きになれないキャラでした……。
シナリオも実は一番コテコテだったんじゃないでしょうか。最初でいきなり一番星とのシーンがある辺りは、さすがグリーングリーン、なんですけど
(^^;;
男女が険悪になったときの双葉の態度は、本気でゲーム続行を躊躇わせるぐらい嫌いでした。ええ。巧いといえば巧いんですが……そこからこのキャラには傾けなかったわけです。それに、以下書きますが若葉のこともありますしね。
朽木若葉
全て分かっていてもグッときました。
いい様に使われる彼女に疑問符を持った主人公、特殊能力を見ても踏み込んでいく主人公にも好感。そして「愛が分からない」「人の感情が分からない」のような意味不明の台詞に頼り切らず、若葉がちゃんと恋心を認識していく様も良かったですねー。ていうか若葉の心は人の心なんですが。
プレゼントを手作りする根性と周りの見えなさは高校生らしくてヨイぞ。うん
(^^;;
人に在らざる者は人の都合で停止させられる運命は避けられないのか。
ならば何故、人に使役させるために、人として認めぬものに、人の心を与えるんでしょうか。
人の人に対する憧れの裏返し。
それでも人は、人の心を作ろうと必死になるのですから、「誠、人間は複雑怪奇」。
ああ、若葉が一番如星好みのSSが書けそうですねぇ。
美南早苗
ぐはっ、早苗さん可愛いですねぇ〜っ。
「黒髪の女の子……また私のSSが遠ざかる……」(ぼそっ)
う、うるさいぞ茜君。ともあれ気を取り直してレビュー。
他キャラに比べ、彼女と仲が良くなっていく過程がしっかりと描写されていて、段々と彼女が心開いていく様を楽しめました。一番「恋愛らしい」進み方をしたシナリオじゃないでしょうか。
ま、良くあると言えば良くあるシナリオですが、王道にこそ人は萌えるのだよ
(謎)。
……と書いてきましたが、最後まで見てちょっと評価は変わりました。
いや、彼女自身が救われないことはいいんです。ここはハリウッドじゃないんですから。
よく考えてみれば、彼女の症状は彼女の口からしか聞いていないんです、この主人公。
その状態で、大手術を前にして怯えている早苗の言葉を全て鵜呑みにして、助からないと決め付けて病院から連れ出した行為。
私は許せません。例え本当にその行為が1ヶ月先を延ばすだけだとしても、その1ヶ月に何があるかなんてわからないのです。
ましてや後のメールでは、早苗自身は怯えながらも手術を迎え、彼との時間を過ごそうと、気持ちを前に向けようと努力している様が描かれています。その心を、手術直前の揺らぎを真に受けて無にしてしまった彼。
早苗にはこのエンドしかないとしても、これではいわゆるバッドエンドではないですか。
……いいんでしょうか。
メインの5人しかないグリーングリーンで、バッドエンドしかないヒロインを置いた意味はなんなのか……。
ともあれ、如星がこのエンド後でSSを書くにしても、絶対に主人公に安らぎは与えてやりませんね、きっと。易々と彼女の死を思い出になんてさせやしません。たっぷりと十字架の重みを味わっていただくことになるでしょう
(苦笑)。
というわけで
グリーングリーン・シナリオレビューをざっくりとお届けいたしました。
さて、ここからSSが生まれてくる可能性ですが……。
朽木姉妹、みどりで、まずはそれぞれ1本ぐらいずつ書いてみたいですね。若葉の話は、掘り下げれば掘り下げるだけネタが練れそうですが、反面、巷に溢れる「セリオSS」ライクになってしまう危険性もありますし。……クロスオーバー?
(^^;;
早苗でのSSも書きたいですが……如星お得意の暗い話になりそうですねぇ。
「星」に絡めて、他作品とのクロスオーバーなんてのはやっぱりやってみたいです。
以上、グリーン・グリーンでした。
SSに関しては気長にお待ちくださいませ。