君が望む永遠〜短編サイドストーリー

MACHINA EX DEO

その扉を開く力を

その扉を開く力を


夢のようなあの時間。
人の願いと時の気まぐれが、私とあの人を一瞬だけ交差させてから。

そこにあった心の距離が悲しくて。
私は水月の笑顔を身体に受けて、あの丘を登った。
──┼──
優しい風 雨上がりの小道辿って行く
心の奥 秘めた想い 伝えたくて
──┼──
もっとわがままでいい。
その言葉を信じたい。過ごしてきた時間があまりに悲しくて。

今の自分を確かめたくて。
私は水から上がった身体で、あの人への道を歩いた。




変わらぬ風景。変わらぬ時間。
でももうそんなものはどこにもなくて、今見えるものだけが私の世界で。

私は何もしてないのに。
失われた翼を思い、暮れ行く空をひとり、眺めてた。
──┼──
茜色の街 あの頃と何一つ 変わらずに
思い出の中 折れた翼を抱え 泣いていたけれど
──┼──
変わらない街。同じ道。
この道があの人へと繋がっていることを、忘れて過ごしてきた時間。

憎むことだけで前へと進んできた。
とっくに折れた翼に気付かずに、心の痛みに涙を流してた。




今なら、分かる。
私だけが、無傷の記憶で生きてきてしまったのだと。
──┼──
時の波が 記憶の傷 そっと 消していく
──┼──
あの人たちも、時の波に傷を洗わせるしかなかったのだと。
今なら、分かる。





それは、抜けるような蒼穹。夏の終わりを先駆ける風。
雲ひとつ無い空に、病院の白い建物が眩しいぐらいに映えている。

今日この日、私が踏み出す新しい一歩を、青い空が認めてくれるかのように。



『私、笑顔で……いられるかな』



姉妹だというのに、あの日から2週間以上、私たちは顔を合わせていない。
でも、今日という日を避けることは……できない。

だから。

本当に、ごめんなさい。
でも今日だけは、私の背中を押してください。あの人にそれを背負わせちゃいけないことは、分かってるけれど。

分かっているけど、今日だけは、その我侭を許して欲しい──





外には3年後の世界がある。私の時間が再びそこにある。
だけど、3年前の時間も、あの人もそこにいない──なんて。
涙が乾いてからも、そんなこと、信じられなかった。

だけど。
──┼──
風のように 流れていく 時と 涙 越えて
手を伸ばして 前に進む 明日がある
──┼──
だけど。

戻れない世界がある。隣を歩きたい時間がある。
我侭で、汚さで、誰かを傷つけても──あの人の隣へ。
心を落ち着けられる場所はもう、そこにしかないのだから。




慣れてきた病院の廊下。私の命を守り続けてくれた医局。
その全てに、ようやく、別れを告げる。
ふと立ち止まって鏡に目を向ける……大丈夫、涙はもう、そこにはない。
──┼──
鏡に写した 切なさと 寂しさは 誰のもの
変わり始めた 心の地図を広げ 夢を もう一度
──┼──
見慣れきった病院の廊下。色んな想いを運んだ世界。
だけど、今日は久しぶり。目覚めが来て、幸せを取り戻す……
そんな夢へとつながる地図を、もう一度、信じたい。




窓から見ていた海は、小さい枠の中に。
でも、この空の下、眼下に広がる海は、どこまでも遠くて。
再び動き出した自分の翼で、この海へと、進んで──いけるかな。
──┼──
取り戻した 白い翼 高く 羽ばたいて
──┼──
いつもより長くて、重い、屋上への道。
少しだけ強く手に力を込めると、優しく握り返してくれる。
もう一つの翼があるなんて、私だけ、ずるいのかもしれないけど。




金網を背にして、微かに震える肩。
この場所で、いろんな人が流した涙。私もここで、涙をそっとぬぐう。
笑顔を向けると、決めたから。
──┼──
今はもう 遙 遠く
あふれ出る 涙 きっと 笑い合えると信じてる
──┼──
扉を前に、微かに震える手。
不安だけど、怖いけど、逃げ出したくなるけど、
それでも、信じているから。




もう目を背けるのはやめると決めたから……。




背後で微かに響く、扉の音。
さあ、振り向いて、踏み出そう──
──┼──
今なら言える 全てを解き放って
──┼──
手を重ねて、微かに気持ちを確かめて。
さあ、扉を開いて、踏み出そう──








「……姉さん」
「……さあ、かえろっか」



「お姉ちゃん……うん、帰ろっ!」




──┼──
愛してる 君を
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君が望む永遠FanDisc 収録
Kiminozo Image Vocal Sound


"Regalo"


Tribute from Luxin
(Another Interpretation)






"Regalo" is now on store for you.







[ Regalo ] Lyrics:fan (c)2002 Triumphal Records all rights reserved
あとがき
「Regalo」トリビュート。
言うまでもなく、「君望FanDisc」に収録されている「Regalo」に強い衝撃を受けて生まれたSS(?)を、ここに捧げます。

音楽での創作って凄いですよね……ホント尊敬します。
この曲を聞いて浮かんだ情景を、敵わぬと知りつつも、どうしても文字の形で作りたくて。作曲様のイメージされている情景とは異なることは百も承知しているのですが、そこは「Another」ということでご容赦くださいませ。

あ、言うまでもないと思いますが、本作品は「Regalo」を聴いてから読まれることを強く推奨いたします(^^;; メッセサンオー、虎の穴等への卸しも始まったようですので。そちらについては、上記ファンディスクへのリンクをご参照ください。

また、筆者如星は君望FanDiscに対しては単なる1投稿者です。
お決まりのお約束ですが、間違っても製作者様に本SSに関するメールなど送らないようお願いいたします。

こんな作品でも、ご感想等頂ければ幸いです。

Triumphal Records 最後に、このような素晴らしい作品を世に出され、また本作品の公開を快諾くださったTriumphal Records様に、心よりの敬意を表します。
 
FORSAN ET HAEC OLIM MEMINISSE JUVABIT.

これらのことを思い出すことは
いつの日にかおそらく楽しみとなるだろう
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