VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
若干在庫が切れ気味の中国茶を補給しに横浜中華街へ。ついでにやはり切れそうになっている蠣油や香辣脆、腐乳を補給。ちなみに香辣脆というのは、辣油の中にネギや唐辛子や花椒がギッチリ詰まったモノ。普通の辣油より複雑な香味と辛味が楽しめる。この辺の調味料があると、何でもお手軽中華風にできるので楽なのだ。目玉焼きを胡麻油で作り、途中で崩した腐乳を入れるだけで中華の気分に浸れるのである。
さて、久々ということもあり折角だから中華街で昼飯を食おうと、前々から名前だけは聞いていた大珍樓別館を試してみる。日本向けアレンジをしていない広東料理が食えるとか。以前のNYXもそうだけど、如星は基本的に現地そのままとか、地方風で少々日本人にとってはクセが強い、なんて料理を好む。別に日本人の舌に合わせるのを否定するわけではないのだけど、やはりアレンジを入れてしまうとアクというかクセというか、そういう元々の料理スタイルが持っているパワーが若干失われてしまうと思う。失われたモノの換わりに得られる洗練さを楽しみたい時もあるけれど、暑い夏や寒い冬にガツガツエネルギーを摂取するなら現地パゥワァが良いと思うのだ:) 冬にジビエを好むのも同系統の発想だったりする。
さておき、今回は二人だったのであまり品数は増やせず、頼んだのは
辺り。しかしとりあえず摘まむために頼んだ飲茶メニュー定番の鳳爪からして、豆鼓の香りが効いていて旨い。「腐乳炒通菜」は空心菜の炒め物なんだけど、他の具は無くひたすら空心菜と腐乳だけにも関わらず、空心菜のシャキシャキの歯ごたえと腐乳の深みが絶妙で、いきなりご飯が進んでしまう(笑)。例湯は「夏バテ防止」と銘打たれていたモノで、肉やら芋やらを煮込んだものを、漉したスープと出汁ガラを分けていただく形。出汁ガラの肉や芋は醤油ベースのタレをつけて食べるのだけど、両者を分離した理由がよくわかる。滋味溢れるとはこの事かというスープで、醤油で汚すには勿体無いほど澄んだ味わいなのだ。とても二人では飲み切れなさそうなほど大量に壺で出てきた時は驚いたけど、終わってみれば完璧に平らげていた:)
蒸肉餅、白灼に至る辺りでメシのおかず度が最高潮に。中華独特の香味の使い方が食欲をそそるそそる。確かにこの味付けだと、慣れない日本人には辛いかもしれない。実は如星とてそれほど中華を食いつけてる訳ではないのだけど、元々香りモノ好きなので全然問題なく楽しんでしまった。なんとなく、香味の効いた料理というとベトナムやタイ等の「アジアンエスニック」を想像してしまうけど、何の中華もアジア料理であるぞと断固主張するような素晴らしさでした。その手のメシが好きな人には絶対お勧め。いやー満足。
今日の一滴="中国茶:雲頂茶園・金片単叢" (2005/08/21)
夏コミで買った本を晒している如星だけど、そういえば所謂大手さんの本は買わないのかよ朝いつもいないくせに、というツッコミにお答えして、その辺も追加で載せてみた。
壁の本を読みもしないのに競って買うことに意義があるとは思っちゃいないし、当日限定のグッズに興味もないので、書店委託に出そうなところは一部当日ゲットは諦めている。最近は夏コミ後すぐのコミティアでも同じ本を出されてるところも増えたしね(そしてティアでは大抵普通に買えるモンです:))。また最新の元ネタを追っていないということもあって、追っかけてるところが減ったというか、正確には新しく追い始める数より追わなくなる数が多いのも事実である。……とはいえ、最近は大手でオリジナルを描かれる所も多く、その辺は安心して買い始められるのだけど。
如星の傾向として、単なるイラスト本は滅多に買わない、というのも「減る理由」の一つに挙げられる。昔からずっと追っていたサークルさんが壁になったり商業でも描かれたりするのは素直に嬉しいのだけど、その一方で、島中の頃に比べて「漫画」を描かなくなってしまう人もいるのは寂しい。Webや商業での「端切れ」に1-2枚フルカラー描き下ろしを加えただけの「ラフイラスト本」なんかはその哀しさの最たるもので、描き手か中身によっぽどの思い入れがなければ手を出さない。CG画集であればまだ壁紙という用途もあるのだけど、こちらは近年Webつつきで十分欲求が満たせていたりもする。
といってもイラスト全般を否定するわけでもなくて、例えば明確なコンセプトに基づいたイラスト本などは結構楽しくて買ってしまう──単なる「最近の萌えキャラリスト」等ではなく、お題が決まっていたりSFめいていたりと、一冊の作品として成立しているようなモノだ。また背景まで含めたしっかりとした「画集」になってたりすると、嬉しさは更に増す:) ちなみにこの辺りは前述のオリジナル増加と重なるのだけど、近年の「属性萌え」の隆盛が、こういったイラスト集やオリジナル漫画を作りやすくしてくれているのかもしれない。買い手も手に取りやすいしね。……でもやっぱり本質的には漫画スキーな如星がいたりするが(苦笑)。
加えて、最近は全面イラスト+短文、詩文、小説を重ねているような作りの本も増えており、この辺はかなり如星のツボだ。昔から「漫画と小説の入った同人誌」はあったけど、どうも小説パートが浮いてしまってるモノが多かったが(如星自身物書きでありながら、そういう小説ページは飛ばしてしまうことも多い)、こういう形で文字と絵がコラボしていく道が拓かれてくるのは、文字書きとしても嬉しい限りである。……まぁ色々と御託を並べてしまったけど、端的に言えば「描き手のやりたいコトが紙面に溢れている作品が好き」ということでもある。元々同人誌なんざ好き勝手やるための舞台なわけで、作り手のエネルギー(更に端的に言えば萌え)が伝わってくる作品には否が応でも惹きつけられてしまうのだ。
如星が大手さんの本を苦労してでも入手するのは、その「やりたい事」を想いのままに遊び倒すに当たり、やはり彼らは「その遊びを作品に具現化させる力量」が高く、作品として楽しいモノになっている確率が高いという点。これは画力のみならず、構成力等の総合力が問われるところでもあるしね。そしてまた自身が本を出すようになって良く分かるのだけど、やはりある程度ネームバリューによって数が出せるという安心感が、逆に派手な遊び倒しを呼び込んでいる傾向があるという点にある。一時期はあまりに平凡なイラスト本が増えて多少うんざりもしていたけれど、やはり「作る事」に対して数日の長を持つ彼ら、オリジナル傾向の増加も相まって、生み出される作品はやはり流石というべき哉。この辺りが、如星が消費傾向が進むといわれる同人誌文化に対して楽観的でいる理由でもあるのだ。
今日の一滴="−−−−" (2005/08/22)
実に半年振りぐらいにプレチェネッラ@横浜へ。
今年の頭に長らくお世話になったシェフが変わってから、一度足を向けただけでしばらくご無沙汰だったプレチェ(特にここ2ヶ月ぐらいは純粋に原稿&イベント進行で何処にも行けてなかったのだけど)。 と、5月頃にまたシェフが変わっていたと、ランチに足を向けたぶどう氏から今日その日のうちにIRC経由で連絡が入ってきた。曰く、比較的スタンダードなイタリアンを作っていた前シェフより、方向は同じではないが面白さでは昨年までのシェフに近いかも、とのこと。 ……そう聞いてしまえば矢も楯もたまらない。今晩たまたま相方と晩飯の約束をしてたのだけど、その目的地を急遽プレチェに変更、早速その日のうちに行ってみる事にした。 といっても金曜日の夜、相変わらずの繁盛らしいので当日直前で予約できるかは不安だったけど、無事一席空いているとのこと。ウェイター氏が相変わらず自分を覚えててくれたことに感謝しつつ、いそいそと会社を出て一路横浜へ向かった。
考えてみれば5月末にイタリアに遊んで以来、なんとなくイタリアンはしばらくいいか、と思っていた節がある。今日久しぶりにあの「トラットリアの空気」に満たされたプレチェを訪れて、ああやっぱりイタリアはいいなぁなどと節操も無く思ってしまう自分がいる。 好みの酒も、定番の発泡水もキチンと覚えててくれて、変わらぬ馴染みの気楽さでいられたのも素晴らしい。なんつーか、楽でいいね(笑)。
さておき、最初の前菜はアスパラ、空豆、トマト等をリコッタチーズで和え、薄く削ったペコリーノとカラスミを散らしたもの。これでいきなり「納得」してしまった。今回のシェフはまだイタリアから戻ったばかりで、かなり「向こうそのまんま」なイタリアンを今はあえて出しているとの事だったけど、このリコッタチーズの絶妙な使い方が確かに向こうの技。実際に向こうでメシを食うと感じるのだけど、圧倒的に身近な存在という事もあって、イタリア人はチーズの料理への使い方が本当に巧い。なんとなくアクセントに使うのではなく、野菜や肉と並列の食材として扱っている、というか……。その感覚が見事にこのサラダに現れていたのである。
続いて前菜をもう一皿、馬肉のタルタル。目の前でいくつものハーブと香辛料を混ぜ込んで練り上げてくれるのだけど、またこのハーブの使い方も実に「イタリア」っぽい。もっと巧く言語化できないかと悩んでしまうのだが(苦笑)、鼻を近づけるとスッと漂ってくる感覚、肉を噛み締めると滲み出てくる香りが、日本で出るイタリアンとは一癖違った感覚をもたらしてくれるのだ。 パスタも自家製のものばかりで、今回選んだ鴨肉のラグーの太目のパスタ(なんて名前だっけか……)は、肉とハーブの味がちょっとざらついた表面に絡んで実に旨い。歯ざわりも茹で具合も、向こうで食べた手打ちそのものである。この他手捻りのショートパスタには、日本でも捻れる人がほとんどいないというシロモノを出しているとか。 そして続くピッツァはモッツァレラ、ルッコラ、プチトマトの「レジーナ」で。これは以前と変わらぬ石窯の主が、相変わらずヴェネツィア辺りで食うモノなんぞよりはるかに旨いナポリピッツァを提供してくれる。ああ、やっぱこのピッツァ食うためだけにも、もっとランチ等に来るべきだなぁ。毎度毎度、胃の限界を超えてもう一枚食いたくなってしまうのだから:)
最後はウサギの煮込み、しかもキッチリと「頭入り」である。確かに出てきた皿には子供の手の平ぐらいの、真っ二つになって前歯等がしっかり分かる、ウサギの頭が堂々鎮座していた。……日本でこの皿を出す勇気のあるシェフに感謝。脳から頬肉から、南無阿弥陀仏ありがたやとしっかり堪能させていただく。無論頭以外でも、肉の味の強さをもぐもぐと噛み締める。ああ、幸せ。
もちろん食後にはチーズとグラッパを堪能し、最後はドルチェにて締め。自分が頼んだのは白桃のコンポートで、白ワインのジェルが敷かれたまっとうなデザートとして旨かったのだけど、一方で相方の頼んだソレント風レモンケーキ「デリツィア・リモーネ」の方は、これまたイタリア的な芸が効いていて楽しく旨かった:) リモンチェッロを染み込ませたスポンジの外側に、これまたレモンの風味のするクリームが掛かったモノ。ドルチェにまできちんと南部風を貫いてるのは流石でありました。
……とまぁ、長々と食ったもんリストなどを書いてしまったけれど、今回はどうしても列記したくなるほど、熱烈に旨いものばかりだったのだ。料理としての面白さが俄然生き生きとしているし、またその料理を下支えしているホールスタッフ陣が変わらずの良さだったのも嬉しい。どんな奥まった席でもしっかり目配りが効いてるし、誰を捕まえても自分なりの料理のリコメンドがもらえる。面白い料理が出るということは、一風変わった名前がメニューに並ぶということでもある訳で、それをホールでサポートできるウェイターがいなければ、そんな「面白いトラットリア」は成立しないのだから。……今宵は長らくのご無沙汰を心からお詫びしつつ、次はもう速攻で再訪してしまいそうな勢いをつけてもらってしまった:) 今後とも良しなに。
今日の一滴="グラッパ:トスカーナ地方の何か、名前失念w" (2005/08/26)
最近日記が妙に同人づいてる気もするけど、とりあえずこの夏の締めとしてコミティアへ。
と言ってもそんなに書くことがあるわけではなく、いつもの様に夏コミで回れなかった所をフォローし、毎度ティアにしか来ない所に新刊を求め、好みのエリアをそぞろ歩く──のだけど、どうも財布の紐、いやタガが緩んでいるらしく、定番のティア袋の埋まるペースがいつもと違って早い早い。気がつくと財布の中に200円しか残っていないという状況で、ようやく強制的に打ち止めが来る有様。帰宅後夏コミ戦利品と合わせて積み上げてみると。なんと純粋に厚みで見れば、3日間足繁く買い歩いた量の半分を今日のそぞろ3時間で買ってしまっていたようだ(苦笑)。
ま、財布が緩かったというのもあるけど、純粋に良質の本が多かった、という事でもある。二次創作の愛を眺めるのも楽しいけど、純粋に読ませる作品を求めて歩き、これだけの本が琴線に引っ掛かってきてくれるのも嬉しい。この中の何冊かはまた勝手紹介なぞしようと考えているので、またそのうちに。
ティア会場でぶどうさんと合流し、相方と連れ立ってそのまま久しぶりに青山ティーファクトリーへ。何処へ行くにしても「久しぶり」の形容詞が付いてしまうのがちと哀しいが、まぁ再開モードということで。
青山のおっちゃんは相変わらずでした:) また月明けにスリランカに飛ぶようで、来月10日には直接持ち込むウヴァが入るとの情報をゲット。ちょうど都内に出る用事がある日なので、これは再び仕入に来るしかあるまい。とりあえず今日は普段飲み用のお茶としてヌワラエリヤを買っておく。「安価な紅茶」として木っ端茶が多く流れ込んでくるセイロンは、逆においしい紅茶を求めるのが難しい。難しいのだけど、このティーファクトリーがあるおかげで全然困らない、という幸せな状況だ。
イベント後の気だるい身体に極上のセイロンティーが染み渡る。ワッフルで甘味を補給し、更に煮出しミルクティーを追加で頼み、紅茶談義から創作小説にまで話に華が咲く。一人で飲む茶は一人で飲む茶、二人で飲む茶は二人で飲む茶、三人で飲む茶はパーティーである、とは誰の台詞だったか。時折おっちゃんの農園話やスパイスネタを交えつつ、後ろを気にすることなくゆったりとお茶会を楽しんでしまった。ああ、やっぱり茶飲み人同志って幸せだな:)
今日の一滴="紅茶:キャンディ@青山TF" (2005/08/28)
キタワァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・* !!!!!
「ヴェネツィア歴史図鑑 都市・共和国・帝国:697〜1797年」。
18kの大枚をはたいて買ってしまった:) ほぼ全ページフルカラーで、ヴェネツィアの歴史・文化を表す絵画・地図・写真がてんこ盛り。執筆者がヴェネツィア貴族ってのにもそそられる。偶然Webで見つけてしまい、実際に在庫のある店に行って現物を触り、さっくりと惚れ込んでしまった一冊である。
実際に買ったのはamazon経由だったり。丸の内の丸善で在庫を見せてもらったのだけど、妙にケースの端が汚れていたり、何より帯の背に近い部分が境目もくっきりと焼けてしまっていたのである。多分奥まで入りきらない本棚で、しかも陽に晒されていたのではないかと推測。見るだけでも電話で取り置きをしてくれたり等、書店の対応は非常に気持ち良かったのだけど、安い本でもないので流石にそれでは買う気になれない。
そこでamazonというのも結構ギャンブルではあるのだけど、まぁどうしても状態が酷かったらゴネてみるかと開き直り、全てリモートで処理できるゾネの楽さに傾いてしまったのだった。ま、結果として良い状態の本が来て一安心である。……ただし、ペリカンが誤配送をやってのけるというオチがついたのだけど。箱が同じあまぞね箱だというだけで、丁目も違う家に配送しちゃうのはどうなのよ。まぁ中身はその家で開封されることも無く、詫び入れと共に手元に来たからいいんだけどさ。
ともあれ、流石に持ち歩いて読めるサイズでもないので、夜な夜なベッドサイドのお供としてゆっくり楽しんでいく予定:) あー楽しみ。
今日の一滴="−−−−" (2005/08/29)