今日の一滴="−−−−" (2004/07/01)
真夏の如き灼熱の休日、暑さにへばりながら原稿などてろてろと書いていたわけですが、ちと近所に外出する用事のついでに酒屋へ。先日の「マスカルポーネ」を食うのに、実はラム酒を自宅に切らしていたのである。まぁグラッパの方が贅沢で旨いのは確かなんだけど、ま、シンプルにラムもいいよなと、さほどいいラムである必要もなく、適当にマイヤーズダークなど買っておこうと思ったわけですよ。
しかしこう帰宅してボトルを眺めていると、ちょっとこの辺のキューバとラムの話に毒されすぎなんだろうけども、無性にラムを舐めたくなってきた。ちょちょいとショットグラスにマイヤーズを注ぎ、ベランダに出て風を受けながら真っ昼間に軽く一杯。 ……昼間呑む酒の背徳の旨さ、ってワケでもないんだろうけど、うっ、旨い(笑)。なんと言うか、この雑味と濃厚さが、汗でベタつく身体に不思議と沁みるのだ。マイヤーズ・ダークラム、製菓用かもだなんて舐めてましたすんません。甘いようで塩辛くもある、ラム独特の幸せな雑味を楽しむのには充分なレベルじゃないっすか。
こう、暑い夏と言うとどうしても、呑むものはさっぱりした奴を大量に、という方向になる。コーンスターチの味のする旨くない日本のビールを煽る習慣は俺にはないのだけど、真面目なエールやホワイトビールは俺も好きなのでその気分は分かる。ウィスキー好きでも、こういう時は絶妙配分のハイボールなど飲みたくなったりもするし。
しかしラムは、そこに真っ向勝負して、しかも夏にピタリと合っているのだ。強い酒なんて身体を暖めてしまいそうだけど、サトウキビの酒は中国医食同源風に言うと「涼」だったりするんだろうか。あるいはこれって、汗には汗を、という対処療法の一種かもしれない。暑い夏に麻のスーツを着込んで、涼しい顔をして熱い紅茶をすする、イギリス紳士的やせ我慢の美学とも言える、涼の取り方。植民地風のお茶のように気取りもしない、ある種労働者風の夏の過ごし方。そういうところで、暑さが苦手な故に敬遠しがちな夏を積極的に受け入れられるから、こうして暑い中飲むラムは「暑さに合う」のかもしれない。
──素直に「旨い」って言えよ、理屈屋(苦笑)。
今日の一滴="酒:マイヤーズ・ダークラム" (2004/07/03)