新聞でチラリと目に入った文字に惹かれ、新日曜美術館@3chの「迷宮都市ベネチアの華麗な建築美と祝祭」をつけてみた。如星が能動的にTV番組のスイッチを捻るのは数ヶ月ぶりな気がする(笑)。
別段教条的に歴史/政治を現代に当てはめようとするわけでもなく(そういうのも好きだけど)、下らない芸能人のレポートに煩わされることも無く(重要)、ただただ美しき海上の都の映像と解説を流してゆく、といった構成に好印象。また「建築美と祝祭」といっても、著名な美術館や宗教画ばかりを写すのではなく、迷宮のような路地や水路の奥や小さな太鼓橋からの眺め、集合住宅の中庭やテラスからの眺めなど、ヴェネツィアの「ライフスタイル」に置かれていた視点に狂喜乱舞。ヴェネツィアマニヤに次回の訪問を決意させるには十分な「猛毒」であったのでした。
それにしてもヴェネツィアは、ただ存在しているだけで美しい。街自体も、建築物も、教会も、絵画も、彫刻も、その全てが魅力的だというのに、おまけにその歴史、英雄譚ではないこの街自身の物語が全ての美しさに渋い深みを与えているのだから。
しかし、この街が如星を惹きつける理由はそれだけではない。ヴェネツィアがその足元を洗う水面の縁に、そこはかとなく漂う哀しさ──その匂いを嗅ぎ取ってしまうが故に、複雑ではあれど、私はこの街の陰に惹かれゆく。完璧なまでに過去が保存されている為に、かつての栄光にこの手で触れられるかのように感じる度に、この街が「一度死んだ」世界である事実もまた、殊更に意識させられる。如何に文化の発信地として再興しているとは言え、ここは本質的に「保存」で生きている街なのだ。「かつて多くの男に愛されたが故に、老いた今も昔の男たちに支えられ幸せに生きる美しい女」とは塩野七生の台詞だけど、老いもいつかは朽ちるに変わる──止まらない人口流出。利便性のため半端に埋められた水路は洪水を誘い、水位の上昇はかつての一階を波で洗っている。
美しい宮殿や教会を見ていると忘れがちなヴェネツィアの側面を、あたかも気楽に街中を歩いているような今日の番組が思い出させてくれたのだ。美しき街ヴェネツィア──栄枯盛衰、光と陰を兼ね備えた魅力。この街を訪れるたび、それが馬鹿らしい思いだとも、自分の生きる僅か数年と、この街が耐えてきた風雪は較ぶるべくもないと分かっていても、それでも常にこう思わずにはいられない。「ヴェネツィアよ、次に俺が来る時まで、このままの姿でいてくれよ」、と。
……早く行かなきゃ:)
今日の一滴="グラッパ・ディ・サシカイア" (2004/02/01)
忙しい仕事に文句はなく。
敵のあまりのタフさに参ったのは事実だが、初見のインパクト等の「一撃の強さ」を見せず、スタミナとも呼ぶべき「粘りの強さ」をじわじわと発揮してくるような相手は珍しく、楽しかったのもまた、事実。
ただ疲れを呼んだのは、対する自軍指揮官のふらついた腰のみである。南無。
今日の一滴="−−−−" (2004/02/04)
Serieのお菓子教室・チョコレートセミナーに出撃。
セミナーと言っても、本来は「生チョコを作る」という至ってまっとうなお菓子作りが目的である。しかし生チョコ作りだけではすぐ終わってしまうので、チョコ試食モードがついているという次第で。 ……エエ、このシーズンのチョコ作りなぞ女性の牙城でありましょうが、試食とくれば俄然意欲も違いまして:) 石や芹でお世話になっているヴァローナのチョコを端から味見てしまおうという魂胆なのである。甘いもの好きとしても、酒飲みとしても、チョコは一級の友でなのだからね(酒飲みが辛党というのはあくまで日本酒の話だ)。
カカオ分の濃度や原種の違いで端からずらりと並べられたチョコレート。コイツを眺めるというだけでも稀有な経験である。もちろん、解説を半分耳に流しながら(w)じっくりと味見していく。……食べながら、傍らに茶色い酒が欲しいと思ったのは秘密である。
一通り味を見て、各人の好みを聞いたりしながら場は進む。甘味第一という人や、深みのある原種が好みな人、カカオ分に比例する苦味の好み等々。写真で言う4番、カカオ分70%の「グアナラ」が如星の一番好みであったのだけど、それを聞いたパティシエ師は即断、「ああ、それは酒飲みの証ですね」。……_| ̄|〇 確かにモルトにはカカオ分の高いチョコの方が合うんですよ、エエ。
ちなみに完成したチョコの半分は茶で、半分は酒で消費されたのはご想像の通り。
今日の一滴="モルト:スキャパ12年" (2004/02/08)
またしても長らく沈黙しておりましたが、その訳は言わずもがな、ここ数日少ない私的時間の全てを聖杯戦争に費やしていたわけで。……流れ込む文字はまさに奔流で(同時に通勤時間を利用して「知性化の嵐」などという、これまた瀑布の如きSFを読んでいることもあり)、日記を書くような安定した文字の出力ができないというツッコミも。
公称総プレイ時間60時間は伊達ではなく、未だシナリオコンプリートには至ってはいないのですが、既に衝撃は脳髄に到達し、痺れは我が肚に降りて心を決める──君望の衝撃から2年余。その余韻は未だ響いているけれど、遂に新たなる物語が如星の鐘を打ち、久方ぶりの転舵を促したといったところでしょうか。そもそも放置しないでゲームをやりこむなんて、文字通り2年ぶりのことですよ(苦笑)。
というわけで、ともあれ「申込み」だけは完了いたしました。今夏、もし当選の幸運がこの身にあれば、当「神慮の機械」はTYPE-MOON・Fateスペースにてお会いすることとなるでしょう:)
ファーストインプレッション、レビュー等はまた後日。書きたい日記も溜まってるし、またしても「こんなとき」に忙しい仕事が恨めしくありますなぁ……。ま、一日はコイツの為に強引に有休取ったんですけどね(w
今日の一滴="−−−−" (2004/02/09)
それは、既に落城を目前にしながらも、なお誇りを失わぬ兵を見るかのようだった。
この戦いにもはや勝利はない。この城を守り抜くことはもはや適わない。いかに士気が高くとも、兵が残ろうとも、矢弾が無ければ戦えぬのだ。最後の頼みの綱、補給の生命線は、伝令の実に簡潔な二言であっさりと断ち切られた。───援軍は、来ない。
かつて、彼らは世界を駆け抜けた。背後を顧みる事など一度も無かった。蹉跌はあった。だがそれを彼らは乗り越えた。彼らこそは、勝利と誇りによって鍛え上げられた、一級の兵士だった。
──落城は近い。明日、この最後の砦は落ちるだろう。時間の前後こそあれど、明日を生き延びる城砦など万に一つもありはしない。だが、誇りは破れない。彼らは決して敗れてはいないのだ。抗うことも叶わぬ運命が相手ならば、せめてその最後まで、この善き物を守り抜こう。この誇りに、仕え続けよう。
……彼らの表情には、そんな無言の声が刻み込まれていた。彼らに敗残の色など微塵も見出すことはできなかったのだ。私は、傍観者である。だが傍観者だからこそ、また記録者として、彼らの最後を見守ろう。彼らが為しえたものを、記憶しよう。私、維如星はここに称え、ここに惜しみ、原初のオーダーを投げかけるものである──
さらば、
今日の一滴="酒:例のマディラ" (2004/02/10)