VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

■ 02月中旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2006-02-14-火】

Nothing Comes Close.

フロマージュショコラ

───思うに、中でも本命の彼女を持っている人種は実にダメダメなのだ。何のためらいも無く「感動した。自分の彼女の手作りが最強」などと断言したりする。まったく呆れた話だ、彼らには客観性というモノがないのだろうか。実に愚かだ。愚かなだけでなく、そういう事を言う連中は論理性に欠けており、すなわちその台詞も明らかに間違っている。

何故なら、客観的かつ論理的に考えれば、現在最強なのは今日私が貰ったショコラケーキなのだから!

……とかいうネタがガトーショコラ日記をみて浮かんだので一筆。

何にせよ、私にはこれひとつあれば十分なのである。……貰う分は。

今日の一滴="−−−−" (2006/02/14)

【2006-02-15-水】

夏コミ申込み:dive into the Heart

遅ればせながらご報告までに、先日夏コミ申込みを無事済ませました。

今まで会社ビルの郵便局で発送してたのだけど(だから消印に会社名が入ってたw)、現在島流し中のため平日窓口で直接出すのは不可能。振込はその点を考慮して手早く事前に済ませておいたのだけど、申込書作成自体で最後まで悩んでた点があってギリギリになってしまった。……なってしまったのに、平日昼間に窓口投函ができないのをすっかり忘れており(笑)、ポスト投函は色々と不安なので初めて時間外窓口(ゆうゆう窓口)なんぞから出すことに。あれって深夜利用になって発送は翌日でも、消印自体はちゃんと当日分押してくれるんすね。とりあえず一安心。

CM70サークルカット

さて。サークルカットを載せたので一目瞭然だとは思うけど、最後まで悩んでたのはジャンル換えの決断について。自分が本当に書きたいものは何なのかという真っ当な悩みから、有り難くも当方を固定で追って頂いている読者の方々に対する不安、文字書きの受け入れられやすいTYPEMOON系からの離脱、ある種古典的とも言える葉ジャンルに新規参入する不安などなど。……書きたい物を書くという道からすれば邪道な悩みに見えることは承知してるけど、如星がオフラインで本を出すと決めた時からの変わらぬ物書き信念の一つに、「小説本は買って読まれて初めてスタートライン」という大前提がある。臆病とは知りつつも、やはり「どれだけの人が手に取ってくれるのか」というフィールドは考えてしまうのだ。

しかししかし、やっぱり根本のところを決めたのは自分が書きたい物は何かという疑問への答えだった。Fateネタの創作は実に楽しかったのだけど、一方で物書きの自由の幅は(他作品に較べ)かなり狭い、ということも痛感した。完成された概念、完成された時系列の中では、どうしても短めの話を織込む方向が多くなってしまい、小説同人にはあまり向かない(1シーンでも作品になる漫画同人やWebSSとはそこが異なる点だと思う)。また如星個人の属性として、原作の時系列の中の綾に織り込むような書き方が好みなので、半ばオリジナルに近いifモノや後日談、あるいは平凡な日常モノの執筆には今ひとつ食指が動かず、その点でもプロット作りは結構辛かったのである。まったく、圧倒的な文字量を持つ原作であるが故に、文字書き達よりもショートエピソードやギャグを使える漫画同人の方が織り込みやすいというのは皮肉である。や、一度決めて書き出してしまえば楽しくはあったのだけど。

一方で物書き対象として迷ったToHeart2だけど、未だ最後のキャラレビューや締めを書いてはいないが、結論から言ってしまえば作品の出来という面ではFateやHollowには及ばない。一本の作品としての統合感、完成度には欠けるし、個々のシナリオも全般的に書込み不足。だが逆説的ながら、ピースのはまりきっていない感のあるシナリオが、物書き欲を刺激したのも確かである──これは本来「補完」より「捧げる」のが好みな如星の同人姿勢からすれば珍しい。また個々のキャラやシーン単位の魅力を見ているうちに、彼女らを使ってあの君望の茜のような甘酸っぱい話(笑)を久々に書いてみたくなってしまったという面もある。平凡な日常、現実に根ざした非現実。色恋沙汰という世界の妙よもう一度。……端的に言えば萌えたということかもしれないんだけどさ:)

……さておき。たかがジャンル換えに長々と言い訳を書き連ねてしまったが(苦笑)、いずれにせよ賽は投げられたワケであります。頭の中には既にいくつか東鳩的短編のネタは沸き始めているので、とりあえずWebなりどっかのイベントでコピ本なりでアウトプットを出していきたい次第。掛け声倒れに終わらぬよう、皆様の生温かい視線に期待しております。

今日の一滴="−−−−" (2006/02/15)

【2006-02-17-金】

Colle Bereto:黄金のグラッパ

昨年のイタリアフェアで購入した「コッレ・ベレート」をようやく飲んでみた。

しばらくは日記を書く気力も残らず日は進み、やりたい事は手もつけられず流れ去る(この日記を書いてるのも22日だ)。そんな仕事側のダルい生活だけど、少なくとも今日以降来週一杯ぐらいはギアを回した分だけ前に進められる環境作りに成功。そういう環境で忙しい分には、持久力に欠けるため人材としては四流の如星でも瞬発力で生きていけるのである(何)。来月からまた不透明というのがアレだけど。

ともあれ、そんなささやかな喜びに自ら報いるべく、秘蔵のグラッパを抜栓してみたのである。揃えたチョコレートなどと合わせてのんびり夜を過ごすなら、酒もちょっといいモノが飲みたくなるモンである。……ぐらいな気持ちで開けたのだけど、いやこれが旨い。グラッパは普段から結構良いものを飲んでると思ってるけど、それらと較べても段違いと言っていい。注いだだけで広がってくる濃縮された香り。樽色のついた熟成物なのだけど、口に含むと樽の枯れた感じというよりは葡萄の芳醇な香りが強く残っていて、樽香はそれを引き立てるように追いかけてくる感じ。元々華やか過ぎる(フレッシュな)グラッパはあまり好みではないのだけど、これはあくまで枯れた香りの中に根付いた華やかさ。舌の上と、喉の奥と、鼻の上に黄金の三角形が生まれる──なんて気取った言い回しは普段しないのだけど、そんな表現がぴったりと当てはまるような飛びっきりのグラッパだった。

ちなみにぐぐってもグラッパについては日本語の情報はない。“Colle Bereto”とは、シエナにあるキャンティ・クラシコに指定された農園の名称のようで、つまりこれはキャンティのグラッパだってことが(当たり前ながら)わかるぐらい。昨年購入したときも日本では市販はしてなくて一部レストランに卸してるぐらいだと言っていたけど、逆に言えばよくまぁこんなところからこんなに旨いグラッパを探してきたものだと感心する:) チョコレートの時にも書いたけど、ホント日本に旨いものを持ち込んでくれる人々には感謝である。

02/23追記:グラッパとしては知られてなくても、キャンティ・クラシコのワインとしては「こんなところ」どころかホワイトハウス御用達の農園と判明。まぁこちらも日本で広く知られているわけではないようだけど。いずれにせよお見逸れしやした。

ところで、自宅で旨い酒を飲むコツは、飲む環境を極力「異界」にすることだ。部屋の明かりは低く落としてアロマランプ程度にし、適当に寛ぐ音楽など掛け、余計な「日常」が目に入らないように隔離する──つまんないコトと思われるかもしれないけど、これが結構重要だったりする。茶を飲むために茶室なんて場所を設えてしまう日本人の例を引くまでもなく、旨いモノにはそれなりに集中できる環境を作ったほうが楽しめると思う。もちろん、普段環境で普段飲みってのも楽しいけどね。

今日の一滴="グラッパ:Colle Bereto (Grappa Reserva di Chanti)" (2006/02/17)

【2006-02-19-日】

コミティア75:表現者の妙

毎度おなじみコミティアの日。特に自分の中でちょっと新しい創作傾向を始めようなんて時には、二次創作とオリジナルの違いこそあれど、毎度アイディアや意欲そのものへのエネルギーをたっぷりと頂ける日である。

さて。たまにはそんな強力な先輩方の本でも一つ紹介させていただくとしよう。

Dr.Patchwork

東山神兵/あらゐよしひこ「Dr.Patchwork」

天才脳外科医(闇医者)を軸にした、実にダークユーモア、ブラックジョークに溢れるシリーズ2作。

と言っても、そのダークさが特に意外なわけではない。元々、この方はオズやアリスのブラックパロディに始まり、ゾンビ少女話や使い魔によるいじめられっ子の復讐劇など、化け物や非現実を通じて人間そのものの闇を、小気味良い皮肉とポップな絵柄で描いた作品を毎度出されており、その観点からすれば「(良い意味で)いつもの高クオリティな作品」と言うこともできる。

が、今回のこの2作は、更にそれに留まらない面白さがあった。このシリーズはいずれも、一度物語としてキチンとオチをつけた後、後書きめいた小説部分や数ページの漫画で本編部分の中心設定をストンと引っくり返してくる。それは「種明かし編」というような野暮なモノではなく、元よりブラックな本編を自ら更にシニカルに解釈してしまう、もう構成の巧さ、表現者の妙としか言いようのないテクニック。まるで出来の良いミステリーか、クラークの短編辺りを読み終えた時のような、「知的快楽」という言葉がピッタリくる読後感である。同人ならでは『漫画という表現』に興味のある方などは問答無用でお勧め。そうでなくてもブラック好きにはたまらない面白さだ。

ちなみにこの方、同人外の本業ではかなり有名な方のようである(自分はぐぐってみるまで知らなかったけど)。しかも本業ではとてもポライトな作風を出されてるのだとか。ダークな話をこのポップな絵柄で描いてしまう事自体十分シニカルなのに、更に本業と同人で綺麗にギャップを作って見せるなんて、本当に徹底して「巧い」お方である。なんと言うか、仰ぎ見るような表現者の器、というモノをまざまざと見せ付けられた感じ。凄いもんだ……。

今日の一滴="−−−−" (2006/02/19)


 
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