VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
今年もやってまいりました夏の宴。どうも冬コミよりも高揚感があるのは夏祭の雰囲気があるからか:)
一日目は別所のTRPGサークルで定例のヴェネツィアTRPG本を発行。毎年大抵一日目は平日な上に、面子の多くが学生から就職してしまい、なかなか売り子を頼める人が少ない中、春のイラストを描いてくれたまりりそ君がヘルプに来てくれたので大いに助かり。感謝。また今回は新刊を出せなかったにも関わらず、結構多くの人が足を止めてくれて嬉しい限り。既刊は持ってるので次回作を催促してくださる(汗顔)方や、あるいは最近だとARIAを見てヴェネツィアでTRPGがしたくなり、ウチの噂を聞いて来たという方も。うーん、アーキタイプに「ウンディーネ」とか作るかなこれは(笑)。ゴンドラ操船と棒術か何かで一つ、それなら他の三精霊職も作るかな云々、妄想を広げていくのが実に楽しい。小説と違って作るのは設定「だけ」でいいので「楽」でもあったり:)
それにしても、去年辺りから毎度吊るしてある印刷会社サンライズの広告(右写真参照)、一体どれだけのサークル参加者がこの下を俯いて通り、あるいは殺意を持って睨み上げているのだろうか。……正直、なんか広告としては逆効果な気がしなくもないのは今回TRPG側で新刊がないからか(苦笑)。
さておき、この日の買い物側お目当てはHELLSINGやローゼンメイデン、ARIAなどのちまちまとしたジャンル爆撃、そしてお気に入りの腐女子御用達・鋼練エリアである。……が、如星一押しのヒュロイ本については、如星自身が前日までの疲れでサーチ能力が落ちていたからか、それとも片割が原作から退場して久しいからか、今ひとつ琴線に触れる本に出会えなかった。またもう一つの大目当てたるFF6だけど、前回冬コミで十年目記念本で賑わった反動かもしれないが、こちらも新刊の量が少なくちょっとした危機感が。特に一番のお気に入り2サークルの片方は新刊なし、もう片方は今回で活動終了という残念な知らせがあり、結構凹んでしまったのも事実である。数少ない回った壁サークルの本が目の前で完売になったりと、全体的に「労多くして収穫少なし」だった感は否めない。ま、お祭りの雰囲気を楽しみに行くのも目的の一つなので、それはそれで良いのだけどね。
今日の一滴="−−−−" (2006/08/11)
コミケ2日目。この日は純粋たる買い手としてのんびりと出撃。
……と言ってもどうしても祭りの気分なので朝も落ち着かず、結局10時半頃には現地到着(笑)。この時間には既に一般列が捌けきっている辺り、近年の列処理能力の高さを改めて実感である。
この日の目的は最近買いジャンルとしては最大ターゲットのマリみてと、毎度の銀英系である。ま、銀英は正確に言えば今やたった一サークルが目的なのだけど。一方のマリみては中堅層の厚いジャンルというか、何度も書いているけど本当に全体のレベルが平均して高い。いわゆるブームも一段落して「本気」のサークルばかりが残っていること、そしてアニメやゲームと違って今なお原作が細く長く出続けているのが、この品質の高さの理由かもしれない。一時期遠ざかりかけてたマリみてだけど、文字通り島中を端から回っていくだけで、琴線に触れる本がガサガサとティア袋に溜まっていき、結果として三日間を通じて単一ジャンルでは最大の収穫が得られてしまった。まさにハーヴェストタイム、これこそが、受け手、読み手としての同人趣味の最高の愉悦の時間だと思う:) 後ほど昨夏のように戦利品を並べて一枚撮ってみますかな。
それにしても、この2日目、そして翌3日目は、この2日間だけを狙い打ったかのように予想降水確率70%。晴れコミケの伝統は何処へやらといった感じだが、今日はそれでも文字通り降り落ちそうな──わずかに遠いビルですら鈍色の裏に隠れるほど雲が低く降りている──空の下、なんとか昼過ぎまでは持たせた辺りが流石の執念と言うべきか。そして午後2時、豪雷が鳴り響くと同時に車軸降雨スタート。東館全体を振るわせるような雷鳴に、一瞬全員が同じようにどよめき、同じように沈黙し、そして何故か会場全体が拍手(笑)。お祭り騒ぎならではの不思議なノリである。この現場感、一体感はやっぱいいものだねぇ。
とは言え豪雨とくれば、戦利品防衛が何にも優先されるわけで。買うつもりの無かったコミケ紙袋を確保し、戦利品満載のティア袋をビニールで包んだ上でコミケ袋に投入、そこらでガムテープを借りて口を封印するという厳重体制にて帰還開始。正直コミケ袋ですらそのまま持って出るのは個人的には嫌なのだが(ギャルゲ袋とか論外)、まぁ背に腹は変えられず。それでも帰る頃には豪雨というほどでもなかったし、落雷の影響で大停止してた山手線も如星の帰還ルートには影響せず、比較的平和に帰りつけた。途中明日の売り子さんにチケットを渡すための待ち合わせに際し、相手方がモロに山手線停止にぶつかってしまったのが一つ災難だったぐらい。雨が降ったコミケ日の割には、実に平穏に済んだ一日でありました:)
今日の一滴="−−−−" (2006/08/12)
今年も無事夏コミを終えました。灼熱の中で当スペースまでお越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。また暑い中参戦された全ての同志の皆様、お疲れ様でした。
……いやホントに暑かったですね。前日まで70%だった降水確率を跳ね返した上に太陽光線まで呼び寄せてしまうとは、三日目の野郎パワーは恐ろしいものがありますな(苦笑)。二日目は予報通りの落雷豪雨だったというのに……(それでも午後まで曇りで持たせた辺りがオタクの執念ですねw)。
さておき、今回もある程度以上は自スペースにいるように致しましたが、今回ちょっとご挨拶に回るエリアが西館にまで広がっており、午後でもなかなか腰を据えていられない状況でした。如星不在時にご来訪いただいた方には本当に申し訳ありません。それでも、Webを見てます等々の声を掛けていただけるのは嬉しいものです:) また肝心の新刊につきましても、ジャンル変更にも関わらず御指名買いを頂戴するなど、物書き冥利に尽きます。本当にありがとうございました。また今回の新刊につきましては、現在とらのあなにて委託手配済です。夏コミにご都合の悪かった方等、販売開始まで今しばらくお待ちくださいませ。
ただ一方で、「Fateの新刊はないのか」という方が結構いらしたのが素直に驚きでした。当方には君望以来の読者の方々が主についていてくださるのだろうと漠然と考えていたのですが、Fate系での読者様が意外なほどいたということなのですね……。いや正直言いますと、Fateに来てから部数は伸びても頂ける感想って減ったんですよ(苦笑)。あまり如星のFateモノは求められてないのかなー、という事で、今回思い切って恋愛小説・TH2側に転向したのですが意外な結果に。……また更に意外と言えば、当方の読者の皆様の多くがTH2未プレイらしいという点ですね。実際当スペまでお越しいただいてからも「プレイしてないし……」と悩んでいかれる方が結構いらっしゃいました。一応今回の本には未読者向け解説などもつけたのですが、ま、冷静に考えれば、君望や奈須世界を愛されてる方に東鳩2は少々軽すぎる気配もあるわけですから、当然の話なのかもしれません。逆にライトな東鳩モノをお求めの方にとっては随分重い話になってしまったかも。無論いずれにせよ、如星には自分の好きなモノを如星節で書いていくことしかできないのですが、一方で「皆様に愉しんでいただける話を書きたい」というのが如星の軸の一つであることも確かですし。なかなか難しいものです。
……裏を返せば、皆様からのご意見というモノは、例え一通でも多分皆様が考えているよりも大きな影響を同人書きに与えるということなのです(超我田引水)。つまらなかった等のご批判も大歓迎ですので、ご感想など下のフォームやメール等にて是非お寄せくださいませ:)
なお、この三日間のレポなどは追々上げていく予定です。
というわけで三日目。毎年へばり切るまで走り回る、特に夏は体力の消耗の激しい決戦日である。
まず、自身のサークル参加日という意味ではまさにこの日が本戦なのは言うまでもなく。また買い趣味の面では、実は三日目で欲しいジャンル量はそこそこ程度ではあるのだけど、一方で如星もそれなりにこの日の大手さんの本が欲しかったりもするわけで:) 最近新規開拓もしてないので欲しいところは段々減ってきてはいるとは言え、コミケをご存知の方にはお馴染みの大行列には一つ回るだけでもぶち当たる。無論自分のスペースも見なければいけないし(買いに来てくださる方々に直接本を手渡せるのは何より嬉しい)、コミケでしか会えない人々等への諸所挨拶周りなどもある。一部は売り子さんに買い物を頼んだりしつつ、この日は例年文字通りの東奔西走となるのだ。毎年毎年、まったくしんどくも楽しい一日だ。
しかし、今年の駆けずり回りっぷりは尋常ではなかったような気がする。ゆっくりとジャンルを眺めるなんて芸当はほとんどできず仕舞い。できればtypemoon系はじっくり見て回りたかったのだけど……。ま、これは挨拶回りが増えた&今年は何故か東西に広く分散してたという面が結構大きい。ただこれは同人関係の付き合いが増えたということでもあり、またふと自分の本の折り返しを眺め、そういやこれだけの本が過去リストとして並ぶぐらいには同人活動が続いてるんだな、と少々感慨深くもなる。
何にしても自スペースを長く空けているのは心苦しいのだけど、売り子スキルという観点からすれば「店長無能だから後ろ座っとれ」と言われてしまうほど、毎年お願いしている女性陣の売り子スキルは高くて安心もする(苦笑)。ごめんね店長算数できなくてごめんね(´・ω・`)
なおこの日の買い物面の話は、後日の戦利品日記の形で別エントリーにしておこう。ただ一点書いておくと、実際に自分がそのジャンルで書く立場になった目線で見て回った時、TH2ジャンルが思いの外勢いに欠けるなと強く感じたのが非常に残念。お惣菜面では結構強いようなのだけど(苦笑)、二日目のマリみてなどのような、如星の琴線にずばずばと触れる物語、ストーリー面での作り込みがしっかりしてる本が思っていたよりも少なかったのだ。何より、別ジャンルの新刊しかないサークルが多いってのは、これは何処の斜陽ジャンルでも共通の証みたいなものだからねぇ……。同ジャンルの方々の良質本は自分の強力な燃料になるだけに、これはやっぱり寂しいものである。ただもちろん一方で、そういう状態の中で光る新刊ってのは「本当に」光ってる。真面目に本を作るところが一定数以下になると、一定以上の気合を持ったところしか残らないので、そういう事象が起こってくる。そのうちコアのみが残って長生きする、というのが「理想的なジャンルの枯れ方」だったりするのだが、TH2は果たして。葉っぱ系の息の長さからも期待しておこう。
……ちなみにそれすらなくなったジャンルは「壊滅」と呼ばれるわけで、ちなみに古巣のアージュは今完璧に壊滅してますな(涙)。ぶどうさん頑張れ超頑張れ。
何はともあれ、こうして夏祭も無事終了。毎度の事ながら、もう夏コミが終わると夏が終わるような感覚を受けてしまう。……いや夏嫌いな如星からすれば、もう夏コミも終わったんだからさっさと秋になれよという気分でもあるのだが(笑)。
如星の場合、コミケまでが物書きという「放出」フェイズで、コミケ当日が「鍋底の燃料の大燃焼」及び「補給に備えた燃料確保」のフェイズ。コミケ終了後はしばらく「吸収も放出もしない無為な日々」として呆け、そして1-2週間後、大体コミケ後のティアで創作魂を刺激されて「吸収」フェイズが始まる。平野耕太曰くの「燃費の悪いオタク創作者」に思い切り当てはまりそうな如星、ここで吸い込んだ量と品質が結構ストレートに次のコミケでの自作品に反映される模様。……ともあれ、このコミケ後の「虚脱感」みたいな時間、割とそれはそれで楽しかったりもするのだ。もう仕事早く切り上げて原稿書いたりPOP作ったりペーパー折ったりしなくていいんだ、という感覚になかなか馴染めない不思議な時間(笑)。
──ああ今年も終わった。いつまでこのユメのような日々が続くのか。黄金の日々も回し続けることで輝きを失うというアンリの四日間は、閉ざされた世界の魅力を否定する物語であり、楽しき日々をいつしか惰性で受け止めるようになる我々への警鐘でもあり、皮肉でもある。……夏の祭りが終わるといつも、自分はそんなことを考えてしまう。夢から覚めたバゼットには自分の足で荷を運ぶ以外の選択肢はないのだが、それが人生の楽しみそのものでもあることに彼女は果たして気づけるだろうか。そしてその事実を認識しているつもりの俺は、それを「秋」になっても認識し続けていられるだろうか。
……妙に感傷的になってしまう、それもまた宴の終わり。
今日の一滴="六条麦茶が一番旨い気が。" (2006/08/13)