VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
プレチェネッラ@横浜には随分とご無沙汰してしまっていた。しかしそろそろ秋も深まり(相変わらず蒸し暑いけど)、寒くなってくれば肉の旨い季節。それに久しくまともなピッツァを食っておらず、プレチェのもう一つの顔・ピッツェリアとしての面も猛烈に補給したくなってきたところ。近年週末の予約は余裕を見ないと難しいこの店、しかし今回は珍しく直前の金曜昼間に一声入れてみたら土曜夜で席が取れるとのこと。.. ふと思い立って即行ける、という幸せを見逃す手はなく、おまけにやたら旨そうなウズラも入ってる模様で、早速予約して出撃である:)
ご無沙汰にも関わらず、おかげ様ですっかりお馴染みさんにさせてもらっており、とかくオーダー周りで気が置けないのが楽でいい。そんな定番オーダーの一環にして、しかし何度聞いても名前を忘れてしまうこの食前酒(そもそも酒の名前を全然覚えない俺!)、今回はきちんと写真を撮っていい加減覚えることにした。……というわけで、毎度食前酒にしているヴェルナッチャというサルデーニャのワインである。ワインとは言えシェリーのような琥珀色をしており、味わいの濃さもスウィートシェリーか紹興酒か、というあの感覚。しかしシェリーのように酒精強化はしておらず、なんでも樽を密閉せずに長期熟成するそうだ。ま、毎度頼んでいるというぐらいで、この酒が旨いってのは言うまでもない:) プレチェお得意の魚介系のアンティパストによく合うのだ、これが。……そんなに旨いのに、自分が覚えてないだけで「名も無き」とか酷すぎますね。ハイ。
さて、しかし今回は珍しく魚介は頼まず、前菜は兎の肉寄せやポルチーニ尽くし(揚げ、ミニスープ、サラダ風)でスタート。ここでピッツァ欲に任せて2枚取ろうとするも、その後にパスタ1、メイン2人前が控えてるとあって流石にウェイター氏に止められ(笑)、定番のレジーナ1枚に。パスタには先日のイタリアフェアで如星も買ってみたキノコ類があったので、それを敢えて選んでみるとゆー遊びを入れてみた。メインはもちろん聞いていたウズラでがっつりと──全体として相変わらずの出来の良さである。前菜にしてもメインの付け合せにしても、いちいち野菜が旨いってのも嬉しい限り。
……メイン終了後に胃袋の具合はどうかと聞かれ、3秒の逡巡した後ピッツァを追加したのは言うまでもない。いや生シラスが実に旨そうだったしええじゃないか(笑)。ピッツェリアとしても単体でレベル高いってのは反則だよなぁ、と毎度思う次第だ。なお流石に今日はチーズは頼まず、グラッパをドルチェで頂き、最後はカフェで締め。久々に「上から下まで」の夜を3時間掛けて堪能したのでした。ああ、やっぱりこういう高品質な時間はもう少し高頻度で補給しないとなぁ。nyx@銀座辺りもそろそろジビエだろうし。エンジン回していかんとね:)
今日の一滴="白(?)ワイン:Vernaccia di Oristano" (2006/10/21)
祝・今期初最高気温20℃未満達成!
とにかく寒い方が調子のいい如星、ようやく俺の時代が来ましたよ:) ……とは言え、こっからのシーズン逆に辛いのは蒸し風呂の電車内なんすがね。つーか空調止めるの勘弁してくださいJR私鉄各社。
ま、実は先月に一日寒い日(最高気温19℃)があったらしいことは、忘れる方向で。
今日の一滴="−−−−" (2006/10/23)
そういえば色々と茶の話を書いてきて、タイトルも「茶葉暮らし」にも関わらず、根本的な茶の入れ方を日記で書いたことはなかったように思う。ま、本でも買わねば「紅茶の正しい入れ方」なんて分からなかった時代ならいざ知らず、今時そんなもんぐぐれば一発という気はする。しかし一方で、あまり「正しさ」に拘らず、日々の生活に根ざした如星の入れ方を公開してみるのも面白いかもしれない。
ただ断っておきたいのだが、如星の入れ方は多分「王道」ではない。いやそもそも、本当の王道って何よ?という疑問の答えは意外と見えないものだ。実際問題、ネット上で見つかる紅茶の入れ方の多くは、結構思い込み主体で書かれている。例えば「ポットのための一杯」や「ゴールデンドロップ」という話は、硬水で茶を入れるイギリスでは正しくても、軟水の日本でやると渋みが増すだけという場合もある。お湯を勢いよく高さをつけて注げば空気がよく混ざってジャンピングが起こるという人もいれば、そんなことをしたら湯が冷めて適正温度じゃなくなる、という人もいる。ミルクが先か後かという話が、イギリスにおける千年論争ってのは有名な話だ。
もちろん、本当に紅茶を入れるのが巧い人は存在する──青山TFの紅茶など、同じ茶葉のはずなのにどう頑張っても店と同じ味にはならないし。が、その辺りのノウハウはもはや「茶葉の状態と水の状態から最適解を導き出す経験に基づいた無数のパラメータ」というような代物で、ゴールデンルールなどと銘打って画一的に提示できるモンでもないのだろう。故に、我々素人は一定の基本線を押さえさえすれば、後は「自分が旨いと納得できる入れ方」ができれば十分だと思うのだ。……ま、要するに紅茶を入れるなんて小難しく考えるこたーない、にダラダラ理屈をつけただけなのだが:)
というわけで、如星的日々の紅茶の入れ方を書いてみよう。まずは茶道具編から。
とりあえず最低限必要なものだけを挙げてみると、
実はこれだけ。一応なるべくあった方が楽なものを付け加えると、
となる。まずティーポットは丸型が基本。よく言われることだが、コーヒーポット(円筒形)か急須しかなければ、むしろ急須を使えと言われる所以だ。なぜ2つ必要かというと、紅茶は大体1ポット3-4カップ分入れるわけで、その間ずっと茶葉を入れっぱなしでは渋くなってしまう。だからちょうど良い濃さに入ったら、茶漉しを通して第2ポットに中身を全部移してしまうわけだ。中国茶でいう茶海、濃さを均等にする役目も果たす。なお、いわゆるガラス製の「ティーサーバー」はお湯が冷めてしまうので×。ポットを2つ用意する代わりに中に引揚げ可能な茶漉しの入った奴は、茶葉が舞わないので×……とまでは言わないけど、次善としとく。こうして第2ポットに漉した状態で入れてしまえば、カップに注ぐときにいちいち茶漉しを挟んだりせずに済む。片手で注げてウマー。
ポットについて細かくいうと、丸型で、注ぎ口がキチンと鶴口になっていて(液ダレ防止)、そして結構重要な点、注ぎ口と本体の継ぎ目が多穴式になっていること。大抵のポットはここがデカい単一穴であり、それでは茶葉がざらざら茶漉しに溢れかえってしまう。欲を言えば保温性の高いボーンチャイナ。しかも、これは白ポットでも意外と茶渋がつかず手入れが楽なのだ。如星は結構夜入れて飲み干したポットを一晩部屋で放置したりしてしまうが、翌日きちんとスポンジで洗ってやればシミはほとんど残らない。注ぎ口側から勢いよく蛇口の水をぶっこんでやれば、継ぎ目部分の黒ずみも取れる。どうしても気になりだしたら薄めた漂白液に小一時間漬ければ良し。お勧めはAfternoon TeaRoomのATラインのポット(小)、3k円以下也。つかこれ以外で上記規格を満たしたポットを見たことねえ。
「ティーコージー」が推奨ではなく必須に入ってるのは意外かもしれない。そもそもコージーって何よ?という人もいそうだ。要は綿入りの帽子風保温具で、茶を入れてる間や第2に移した後のポットに被せて保温する。生活の中で紅茶を一人で飲む場合、大抵1ポット入れたら小一時間掛けてblogでも眺めながらずるずる啜るモンであり、これでコージーがないとあっという間に冷めてしまう。茶を入れる段階でも、湯の温度を落とさないのが紅茶を旨く入れるコツなので、コージーは必須とした。布巾やタオルで代用しようとする方がよっぽど大変だしね。ちなみに消耗品。綿入りだからおいそれと洗えないのに、表面は跳ねた茶でまだらに染まっていく宿命にある。普段使い品なのでキニシナイ!でOKOKだが、流石にあんまり汚らしさが目立つと茶を飲んでて萎えるので、そーなったら買い替え。ちなみに俺はミニ鍋敷きも併用してる。
メジャースプーンは、小さじと中さじの間ぐらいのサイズ。紅茶は「抽出時間」より「適切な茶葉の量」の方が味を左右するので、あった方がよさげ。ふつーのスプーンより深いので毎度一定量が取りやすいしね。なお柄の短いドザール(スコップ)みたいなのも良く売ってるけど、茶缶の形状にも寄るが結構使いづらいので注意。特に円筒型のまりあげ缶を使うなら、柄の長い計量スプーンぽい奴が汎用でお勧め。
キッチンタイマー。そんなん時計見ればいいや。否。ただの時計で3分測るのは結構めどいぞ。時に4.5分とか変則的な茶葉もあるし、そのうち濃い目が欲しいから20秒追加、なんて芸当もやるようになったりもする。他の事(第2ポットを温めたり茶菓子を出したり)してると時間忘れがちだし、茶以外でも何かと使うはずなので買っとけ。如星は1分前予備警告がある奴がお気に入り。砂時計は風流だけど、やっぱり落ちきった瞬間を見落としがちなのでそのうち使わなくなります(経験者談)。
ティーカップはまぁ気分の問題。別にマグでもいいが、マグ=円筒型だと底に茶渋がたまりやすいぜ。底面と側面が直角で洗いにくいから当然だな。半円型のカップは香りが立つという以外にも、そんなメリットもあったりする。……さっきからずぼら男向けの忠告が多いのは生活茶ということで気にしないように。ま、あとはやっぱり白い方が茶の色が楽しめるのは確かだ。あと、ちょっとした茶菓子(ミニクッキー1-2個とか)ならソーサーに載せちまうという技も使える。
茶盆は紅茶とは直接関係ない番外編だけど、生活茶には便利なので追記。ポット1つ、カップ、茶菓子の小皿が載る盆で茶飲み場(PC前やらベッドサイドやら)に持っていき、カップ以外は盆に載せたまま使うのが吉(カップは飲みやすい手元に置くので)。食卓で茶を飲むことなんてほとんどないし、ポットの底に茶が回ることも多々あるので、ベッドの上だろうが積み上げた雑誌の上だろうが何処でも置けて、そして盆さえ洗えばOKという方が楽なのだ。飲み終えたらカップを戻してそのまま洗い場へ。100円ショップでナンボでも売ってるのでお勧め。
以上、道具編だけで結構長くなってしまった。実践編が続く予定だけど、ぶっちゃけ上記道具を揃えちまえばもはや勝ったも同然である。いえっふー。
今日の一滴="−−−−" (2006/10/25)
さて、前回に引き続き紅茶の入れ方。今回は実践編。相変わらず「美味しい入れ方」というより「生活密着型の入れ方」ではある。でも、それなりに旨い事は保障するでよ:)
まずは湯を沸かす。第1・第2ポットを温めるのにも使うので、入れる量の倍ぐらい。毎日入れてると薬缶の重さで大体水量が計れるようになるけど、良く分かんなければ実際ポット経由で2ポット、と入れてやればいい。ついでに、ポットのどの辺まで入れれば何カップ分かも一度調べておくこと。道具編で触れた多穴式ポットなら、縦に並んだ穴の位置で覚えられるので楽。あと茶葉を入れるとその分少し水かさが増えるのも考慮すること。
ちなみに慣れない内は、先に茶葉やその他道具を出しておくこと。湯が沸ききった時に温まったポットに茶葉が入った状態になっていないと、沸かしすぎの湯は旨くないので悲劇である。まぁこの辺は料理と同じやね。慣れてくれば、一番時間の掛かる湯沸しの部分で茶葉準備がさくっと完了するはず。
次に、第1ポットを温める。給湯器からさくっとお湯の出る環境の人はそれを使えばいいけど、湯が出るまで時間の掛かるウチのようなタイプであれば、沸かし途中の薬缶のお湯を使う。意外かもしれないけど、薬缶の中の水は1-2分もしないうちに「湯」にはなっているので、これを少量ポットに注ぎ、軽くポットを揺すって熱をポット中に回す。ちなみにこのステップは夏場は省略してしまうことも。冬場はポットもキンキンに冷えているので必ず温めること。
ちなみに水は水道水でいいや、というのが定説。汲み置きはアウトらしいが汲み置きとか使ったことないので不明本気で不味いらしい。気を効かせたつもりでミネラルウォーター等を使うとエラい目にあうようだ。ウチはふつーの家庭用の浄水器通した水を使ってやす。つか、そのままグイッと飲んで不味くないならその水で十分。
いよいよ茶葉の投入。カップ数と同さじ分の茶葉を使う。中国茶と違ってひとさじ分の茶葉の量はどれも大して変わらないので、茶葉のサイズはあまり気にしなくてもいい。ただ完璧なファニングス(粉)になってる茶葉なら、半さじ分ぐらい少な目にしても良いかも。アッサム等を使って濃ゆい茶を飲みたければカップ数+1。この辺は茶葉や好みの差の出るところなので、加減は同じ茶葉を何度か入れて覚えるしかない。
この頃にはお湯が沸いてるのが理想。手元にコージーがあることを確認したら、どぱっと熱湯を投入。先にも書いたけど、沸かしすぎないこと。この沸かし過ぎないというのは、実は2-30秒の放置もダメというぐらいシビア。まあ最初はある程度適当でもいいけど、茶葉の旨みをきちんと味わいたくなってきたら気にした方がいい。デカ目の泡がぽこぽこ浮かびだしてきたら、もうそれは湧いている。あと笛吹き式の薬缶の笛がなる頃には沸かしすぎという罠がある。頃合をみて蓋を開けて湯を覗いた方がいいだろう……この辺も同じ薬缶で回数沸かしてると勘どころが掴めるかと。かと言って、沸いてしまったからといって火を止めて温度を下げてしまうのもダメ。紅茶は100度に近い温度で旨みが出るのである(一部ダージリン等を除く)。ちなみに如星は手肌が弱くて熱い薬缶の取っ手が持てないので、コージーをミトン代わりにして注ぎ、そのまま被せてたり。
熱湯を注ぎ込んだら速攻蓋、コージー被せ、キッチンタイマースタート。たまに茶菓子の準備に気が行っていてタイマーを入れ忘れたりするので、皆様も注意されたし(苦笑)。抽出時間は3分を基準に、後は茶葉によって前後させる。茶葉を買うときに推奨抽出時間を聞いとくのがいいし、ブランドの缶物なら大抵目安時間が書いてある。とは言え、これも好みと経験則に頼るところが大きい。
少しは真面目な茶の入れ方っぽい点に触れておこう。良くある誤解なのだが、「濃い」と「渋い」は別の概念である。熱湯に浸された茶葉からは旨み(濃さ)と渋みの両方がじわじわと出てくるのだ。そしてもう一つ、濃さは薄められるが、渋みは薄めても消えないし、濃すぎるお茶を不味いと思うことは滅多に無いが、渋すぎるお茶は飲めたもんじゃない。故に紅茶の最適な抽出時間とは、自分が許容できる以上の渋みが出てしまうギリギリ前まで旨みを引き出した状態となる。無論渋みを楽しむダージリンのような茶もあるが、それでも一定線を越えてしまうと流石に飲みにくい。
んで、濃さはある程度「茶葉の量」でカバーできる。つまり「渋いけどあんま旨みがないな」という紅茶が入ってしまったら、次回は時間を少し短め、茶葉を気持ち多めにしてみるのも手だ。逆に渋みを楽しみたければ、茶葉の量はそのままに、時間だけを長くする。ま、この辺は多少は高度な技と言えなくも無いので、最初はあまり気にしなくていいと思う。また差し湯では誤魔化せない渋みも、ミルクを入れれば打ち消せる。ミルクティにする時は渋さを恐れず、どーんと多め・長めの抽出をかますのが吉だ。
余談だが、イギリスのように硬水で出すと、旨みもなかなか出ないが渋みも出ない。だからゴールデンドロップみたいな発想が出てくるのだろう。また逆にF&Mのような世界展開をしている紅茶の場合、日本向けブレンドは最初から軟水仕様になってたりする。イギリス土産の紅茶を飲んでみたが渋かった……という経験はないだろうか? そういう茶葉は硬水で長時間出すようにブレンドされているのである。
閑話休題。タイマーをスタートさせたら、残っているお湯を第2ポットに注いで温めておく。もし湯残量がゼロになってしまっていたら、熱くなっているままの薬缶に少量の水を入れ、強火に掛ける。ものの30秒でそれなりの熱湯が作れるはずだ。ちなみにカップを温める、ってのも好みだと思う。如星は猫舌なので、カップは全然温めない。なおカップ用のお湯は、第2ポットを温めたお湯を再利用すると良い。
そしてこの間に茶菓子を用意しておくのが、手際の良い茶師というものである:)
タイマーアラート、抽出時間終了。第2ポットの湯を捨て、茶漉しを乗せ、第1ポットから茶を注ぎきる。注ぎきったら第2側へコージーを移し、茶盆に乗せ、茶入れは完了だ。なお最適な抽出時間がまだ分からない時や、前述の失敗で抽出時間が分からなくなってしまった場合、まぁ何とか2-3分ぐらいを見繕い、第1ポットから味見する。蓋を開け、スプーンで底からかき混ぜた後にすくって啜る。上の方だけを啜ると当然薄いので。「よしキタコレ」というレベルになっていたら、同様に注げばいい。ただ当然これをやるとコージーを外し、上蓋が開いた状態が都度発生するので、温度は下がり、旨みは出にくくなる。毎度毎度やるようなモンではない。
さて、これで幸せな紅茶タイムが始まる──待った。少なくとも第1ポットは洗っておこう。……紅茶のタンニンが腐敗を防ぐので、茶葉自体は一応そうそう腐らないモノではあり、放置しても臭ってきたりはしない。むしろ三角コーナーや生ごみ捨てに投入することで、腐敗臭を抑える効果すらある。が、茶葉入れっぱなし放置では流石に茶渋も激しくついてしまうし、茶を飲んで寛いだところで茶葉捨てを含む洗い物をするのはダルい。洗ってしまおう。こきゅっと。
なおこれも道具編で書いたけど、まぁ飲み干した後の第2ポットやカップは、多少放置してもそれほど茶渋は付かない。……ま、早めに洗った方がいいのは確かデスよ。カップとか茶菓子食った口つけたモンなんだし。
──以上、これが如星のルーティーン茶入れ作業である。都合10分程度。茶を飲むのに掛けるこの時間を、長いと見るか短いと見るかは貴方次第。如星の場合、逆にこの10分間台所に立つのが、結構良い気分転換にもなったりする。10分も掛けたくない、茶葉処理の手間が面倒というのなら、最近増えてきた大型サイズ・テトラ型のティーバッグをポットで使って茶を入れるという手もあるしね。如星も会社では使ってるけど、そこそこ飲める茶が入る模様。
要は、あちこち手を抜いても結構旨い生活茶は楽しめる、ってコト。この記事で、少しでも自宅紅茶に興味を持った人が増えてくれれば、何よりの喜びである:)
また今回は書かなかったけど、上記全てのプロセス以前に、飲みたい茶葉を悩むってのも楽しい部分だ。こうなってくると完全に趣味の領域だけどねん。さて、茶でも入れてくるとしますか……。
今日の一滴="−−−−" (2006/10/26)
そろそろ牡蠣もシーズンイン。昨シーズンに一度も生牡蠣を食いに行けなかった恨みを初頭で晴らすべく、久方ぶりのぷく氏の誘いでオイスターバー、Links Oyster Bar@五反田へ。
氏曰く、このシーズンは南半球のシーズンアウトとギリギリ重なり、南北双方の牡蠣が食える貴重な時期だとか。確かにこの日、店では北地からの牡蠣も、タスマニアの牡蠣も双方を堪能可能であった。ま、そんな能書きを考えてたのは入店までで、着いてしまえばもーひたすら生牡蠣を貪ること十数個、といったところ。その日生で食えるものを一揃い試し、旨かったのをリピート注文という定番スタイルを敢行である。……如星の好みは相変わらず「磯臭さ」の強いタイプらしい。これが旨かった、とはっきり味の違いが分かって楽しかったのだが、例によって名前を覚えられないタチである。えーと、確かマイルドな女川と、後一つかなり潮くさいのが旨かったのだが……浜市、だったかなぁ(ぐぐった)。この日の的矢は妙に味が薄くて今ひとつだったのは覚えてるんだけど。あとブラックなんちゃら。さっぱり役に立たない日記ですねこれ。
ま、この他シェリーのハーフボトルを片手にフライから香草焼きやらグラタンまで牡蠣尽くしを堪能し、昨年のリベンジは完璧に果たされたのでありました。が、今回はリゾットやらパエリア等の炭水化物は断念。それは「この後」にラムを大量に揃えているバーがあるのだが、という魅惑の提案が出された為であり、胃袋に若干の余裕を残しての離脱である。ま、といいつつ最後に定番の「生牡蠣の勝手アイラモルト掛け」なんて酒飲み食いもやってるんだけどね:)
ともあれ、この店を使うのは初めてだったのだけど、オイスターバーの名に恥じず、本当にメニューも端から牡蠣、あるいはいくつかの貝類のみであり、なんちゃってサイドメニューをほとんど置いてない辺りに潔さを感じるね。牡蠣の質はもちろん良かったし、その割りに値段も安め。妙に気取ったところも媚びたところも無く、流石は古くからの名店と呼ばれるだけの店でありました。日や時間帯に寄ってはかなり混むらしいので予約をお勧めである。
という訳で、五反田から西麻布へ細い路地を曲がりくねりタクシーに揺られること数分。「Tafia」は「バー」と聞いて浮かべる地下のカウンターのようなイメージとは裏腹に、ほの暗いラウンジのような路面店なのであった。店内も確かに「カリブの止まり木」といった風情で、ローカウンターとレザーカバーの椅子が心地よい。つか、そもそも店の肩書きは「rhum et cafe」なのであった。
そんな「今時のカフェ」に、ずらりと並べられた大量のラム。だがその店の構えからも分かるように、マニアックな酒を好んで飲みに来る客ばかりではない。カリブ料理を出すということでも知られているようだし、ラウンジ風のテーブル席にはラム版のミント・ジュレップたる「モヒート」等の軽い飲み物も良く出て行く。あくまでカリブの空気で酒を楽しませるのを主眼としつつ、しかし一方でディープな酒を求める客にキチンと応えられる極厚の揃えも持っている、といったところだ。
さて、相変わらず酒の名前を余り覚えていないのが恐縮だが、まずはちょいと小腹が空いてきたのでコロンボ(カレー風の煮込み)を食いつつ、スモーキーな樽熟ラムを一杯頂く。……いやこの軽い気持ちで頼んだコロンボがかなり「本気」のスパイス仕立てで吃驚。辛いもの好きでなければ攻略も難しいぐらいなのだけど、ダラダラと汗をかきつつグイッとやるラムもまた中々楽しいもんだと分かる:) 元々如星は「真夏の太陽の下で汗をかきながら飲むならむしろ気候に合ったストレートのラム」という意見の持ち主なので、こういう飲み方は大歓迎なのだ。
今回頂いたラムの白眉は、如星も樽熟では飲んだことのある「トロワ・リヴィエール」のホワイト(フランス領らしく言うならブラン)。酒好きなら馴染みのバーテンからこの蒸留所の薀蓄を聞いたことがあるかもしれない──辺りに盛大なラムの香りを撒き散らしつつ炎上してしまった悲劇の蒸留所なのだ。「この酒で復活します買ってくださいラム」が出ていて、当人たちは真面目だとは言え不謹慎にも少々笑ってしまった記憶がある。
さておき、マスターの女性曰く、カリブ現地では樽熟のダークよりもステンレス樽等を使った樽香・色をつけないホワイトの方が良く飲まれているとか。その辺の事情は、樽熟の高級品よりクリアな大衆酒の消費が多い、イタリアのグラッパと少し似ているのかも。そして今回飲んだトロワは、なんと飲み口においてもフラワリーなグラッパを思わせる味わいと香りだったのだ。クリアなグラッパはストレートに葡萄の香りが漂ってくるモノがあるけれど、不思議なことにこのラムも一瞬そんな果物じみた華やかさを感じさせてくれ、正直、ラムという酒に持っていたイメージとは全然違う感覚に驚いた。同行のぷく氏は「穀物のような、コーンのような」と表現していたが、お互い自身が飲み慣れた酒の「甘み」のイメージをそこに投影していたのかもしれない(笑)。
スターターで飲む、モルトのようなスモーキーさを持つラム。今回見つけた、華やかな葡萄のような香りを漂わせるラム。そして定番の、ショット単体でデザートになるかのような、チョコめいた甘さを持つラム。単一の「サトウキビ」から作られる酒に、これだけの幅があったことが驚きであり、そしてもちろん、実に楽しい。まぁ冷静に考えてみれば、同じ「麦」から無数のモルトが作られ、同じ「米」から無数の日本酒が作られているのだから、ラムだって同じような幅を持っているのは当然なのだけど、日本でバカルディやマイヤーズばかり見ていると中々実感が湧かない物だ。今回はたまたま自分が良く馴染んでいるグラッパに近いラムを楽しませてもらうことで、ガツンと一発その事実が頭に叩き込まれたのだった。
ちなみにカリブ系ということで、ここでは当然シガーも楽しめる模様。あとから来た隣のお客さんがシガーをやり始め、相変わらずタダで香りを肴にさせてもらえてしまった(笑)。ただし、店からも特に隣に確認も無いようなので、シガーの香りが苦手な人には辛いかもしれない。また少々惜しむらくは、マスターの方は知識も経験も豊富のようだけど、あまり積極的にはリコメンドをしてくれないタイプのようだ。こちらから軽く突付きさえすれば実に嬉しそうに旨いネタを勧めてくれるのだけど、細かく酒を楽しむという点では、突付きスキルを要する上級者向けの店かもしれない。もちろん、気軽に酒と空気を楽しむなら、そこに上級も初心も無い:) 西麻布の「奥地」でちと行きにくい場所ではあるけれど、気軽にも、ハードにも使える、是非再訪したい良店であった。お勧め。
今日の一滴="ラム:トロワ・リヴィエール・ブラン" (2006/10/28)