VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
久しぶりのプレチェネッラは、やっぱりプレチェだった。
日記によれば前回の訪問はなんと5月末。隣にピッツェリア専門の姉妹店・マシケラができ、新店舗ということで人を連れて行くにもそちらを使うケースが続いたこともあって、実に4ヶ月もの間が空いてしまっていた。……まぁ、マシケラだって最後に行ったのは7月、原稿・コミケシーズンはやっぱり忙しいし、加えて気だるい盛夏じゃ今ひとつのんびり外食って気分にならないのも確かなのだが。
ともあれ、翻って初秋。食材の旨い季節である。今回もシーズン物としてポルチーニ茸の三種前菜(スープ、焼き、クレープ包み)に始まり、ブリの子供とイタリアンパセリのパスタ、ウサギのラグーのピチ(太麺)などを順当に堪能。メインには「カサゴの顔以外を少しスマートにしたような」なんちゃらという魚(相変わらず名前覚えません……)と根菜の焼き物、そして自分には本当に久々となるウズラをいただいた。……いや魚も身が恐ろしくしまっていて、もっきゅもっきゅ食う白身魚という珍しい旨さを堪能できたんだけど、今回はそれ以上にウズラのぷりぷり感がこたえがたい旨さであった:) 黒トリュフが削って掛けてあるのだけど、黒トリュフって有機臭が結構強く、個人的には「無理に掛けなくても」と思うことが多いのだが、今回のウズラには見事にその香りの濃厚さがピタリと合う。骨を摘まんで最後までしゃぶりつくしてしまった。
グラッパには樽熟の「Pin」というワインのグラッパをお勧めに従い選択。香りは樽ならではの枯れた感じだけど、味わいはまだフレッシュな葡萄というグラッパらしい感覚だ。ビンの最後の方だったので、1ショット未満残してもしょーがない、と少し多めにドドドッと注いでくれるとゆー幸運に遭遇し、2杯分近くを後のドルチェとの合わせまでしっかり堪能できてしまった。うふ。
個人的に、こういう店でドルチェ(デザート)を頼まないのはかなり損をしてると思う。レストランの「おまけ」などと思うなかれ、やはりキチンとした店は全体の締めとなるべきデザートを丁寧に作りこんでいるモノだ。今回相方の頼んだ「ティラミス」は大振りのカクテルグラスに入って登場し、アマレットのアルコールがしっかり効いた深い味わいに、食用ほおずきという珍しい酸味がちょいとつく逸品。自分の方も「リゾット(米)のタルト」とイタリアらしい皿で、パインのように刻み目を入れて焼かれたリンゴがドカッと乗ってて旨い旨い。上記の重いメシの後でそんなに入るのか、と思うかもしれないけど、スタートからドルチェまでのんびり食って3時間強。メインが終わってから1時間以上長居をしているわけで、おしゃべりを楽しみながらゆっくり食えばいいのである。たまにメインを終えてそそくさと帰っちゃう若いかぽーとかを見かけるけど、そもそもが決して安い店ではないのだから、時間を使いきり堪能しきる心持ちでくればいいのになぁ勿体無い、なんて思ってしまうのだ。
とは言え、二人で完全フルポーション(アンティパスト2皿、プリモのパスタ2皿、セコンド主菜2皿)のオーダーは日本人にしちゃ珍しいことに代わりは無く、厨房では「本当にこの量でいいんですか」「如星さんとこなら大丈夫」という会話がなされたと後で聞いた(苦笑)。しかもその後チーズ食ってドルチェ2皿。いえい。
あ、余談だけど、特にイタリアンってコーヒー等飲み物とドルチェって一緒には出てこない所が多い。別に「コーヒーの出が遅い」ってワケではなく意図的なのだ。甘味は甘味だけで堪能し、終わってからエスプレッソでも嗜むという流れを意識しているのだろう。もちろん、日本人としちゃ甘味を流す意味での紅茶等が欲しくなることもあるので、その辺は素直に店に伝えた方がお互い幸せになれると思う。俺はドルチェを酒で過ごしてしまうので、終わってからカッフェ派ではあるけどね:)
今日の一滴="−−−−" (2007/10/06)
先日ドルチェとグラッパのネタを出したので、もう少し甘味の話を。
近年、酒とスイーツという合わせの話が急に注目されだしてる感がある。今は無きCafe Serie時代、数年前から極上のアルマニャックとタルトの合わせを堪能していた身としては、ぶどうさんや当時のカフェセリマスターと「年単位でおせーよ」と笑ってしまうのだが、それはさておき。何度も書いてるけど、タンニンの強い赤ワインにカカオ分の高いショコラを合わせるなどとゆー渋々な合わせや、シャンパンの繊細さにはありえない程強すぎる甘味との合わせなど、何考えてんだか、とゆーよーな代物が未だに多くて萎えてしまう。
実は酒に限らず、パティシエって普段「飲み物」飲まないのかってぐらい、例え名店であっても「飲み物」との合わせって異常なほど無頓着な気がする。そういえば青山TFの店長も「甘味に合わせてマトモに紅茶をセレクトしてる所など皆無」とボヤいていたが、本当にその通りだと思う。作り手は一応それなりに明敏な舌をしてるはずなんだから、その辺のことを考えてないとは思いたくないのだが……。やっぱり受け手の問題なのかなぁ。……その点、実は和菓子ってとっくの昔から抹茶や煎茶との合わせを大前提に考えているわけで、こういう合わせの意識を日本人が持っていないわけではないと思うんだけどねー。ま、そもそも「酒は旨いもの」という意識自体が途絶えてる感もあり(チェーン飲み屋のクズカクテルとスーパードライで育つんじゃ当然だよ)、そっちはそっちで大きく語るべき話かもしれないが。あ、日本といえば日本酒と餡子ってモノを選べば意外に合うらしい。日本酒呑める人は是非色々実験して欲しいところだ。
ともあれ、結局今のところ甘味側に期待できない以上、「酒を置いている側」が甘味側に歩み寄っている店のほうが、手っ取り早くマリアージュを楽しめる。先日書いたようにフレンチやイタリアンでデザートを食うのも一つ、モルトやグラッパを置いている「カフェ」を狙うのも一つ、あるいは近年「酒の専門店」たるバーで真面目なスイーツを出しているところもあるとか。前者2つは合わせを自分で考えなきゃいけないけど、バーならば向こうがキチンとリコメンドしてくれそうだ。いくつか行ってみたい店は調べてあるので、いつか試してみたい。紅茶との合わせについては……これは今のところ絶望的だなぁ。ATF等の旨いお茶屋なら「茶菓子」は出るんだけど、いわゆる本格的なデザート食いつつ旨い茶、というのはなかなか味わえない。どっかないかなぁ。
しかし一方で、甘味側から酒へ挑戦した店を2つほど最近試していたりもする。イタリア菓子の店「ソル・レヴァンテ」と、デザートコースの「ミラヴィル・インパクト」、この店のレポはまた後日。
今日の一滴="−−−−" (2007/10/07)