VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.

如星的茶葉暮らし

■ 08月上旬 ■

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酒の一滴は血の一滴。茶の一滴は心の一滴。ネタの一滴は人生の発露。


 

【2007-08-06-月】

夏コミ新刊・Fate/Zero Squared入稿

本日、夏コミFateサイド新刊「Fate/Zero Squared」を無事入稿いたしました。

実に一年半ぶりのFate作品、正直苦吟に次ぐ苦吟でした。つい先月まで渾身の恋愛小説を書いていた頭を、渾身の殺伐小説に切り替えるのは予想以上に難しく(苦笑)。しかしそれでも、切嗣の絶望、そしてバゼットの起源の「匂い」を何とか描けたかな、と思っています。

なおはてダでも一度触れましたが、本作は一冊完結作品ではありません。今回は主に始まりの物語、プロローグ部分の収録となっております。予めご了承くださいませ。また設定の一部に拙作「Fate/estate dolce」のヴェネツィア・タラマスカネタを使用しております。既にお読み頂けている方には問題ありませんが、未読の方、かつWeb版もご存じない方の為に、冒頭にキャラマテ風の設定資料を入れさせていただきました。estate dolce既読の方も、一種のネタとしてお楽しみ頂ければ幸いです:)

それでは、夏コミ3日目・東オ-13b「神慮の機械」にて、TH2新刊と合わせて皆様をお待ちしております!

ああ、これで今年もようやく夏が迎えられる……!

今日の一滴="−−−−" (2007/08/06)

【2007-08-07-火】

如星流サインオフ・弓弦外しの一日

昨日をもって、6月中はTH2、7月中はFateと書き続けてきた夏コミ新刊2冊が共に入稿を完了。また仕事面でも、同2ヶ月間情緒不安定すら引き起こしてきた野暮用に先週で片がつき、今日はヴェネツィア帰国以来2ヶ月ぶりの開放感に浸っている:)

という訳で、仕事も隙間ができたので今日は思い切ってオフにしてしまい、張り詰めてた弓弦をゆっくり外してやることにした。

ランチ前のバールタイム

たっぷり寝過ごした後、まずはのんびり昼飯でも食おうかと珍しく平日昼の青山ティーファクトリーへ。……しかし流石は平日昼、この立地であのお茶がでるこの店がランチで賑わってない訳がなかったのだ。近所の女性でごった返す店内は戦場の如しで、一席空けてはくれたのだけど、13時頃なら空くことを確認して一旦離脱。しばし黙考の後、折角この辺りまで来たのだからと、表参道向こうのソル・レヴァンテまで足を伸ばした。

この店は「イタリア菓子」の貴重な専門店である。リストランテもついていて、ゆっくり腰をすえてスイーツとグラッパをやることもできるが(あれメシは?w)、きちんと入口にバールスペースがあるのが嬉しい。プチサイズのスイーツを1つ2つ見繕い、バンコに肘をついてカッフェをのんびりやるのも乙なもの。今日は暑かったのでまずはシェケラートで身体を冷やし、涼しげなライムのタルトを一つまみ。このタルト、ライムだけかと思ったらさり気なくラベンダーが絶妙に効いている。巧いなー。

バンコでぼんやり裏に並んだ酒を見ていたら(バールってのは酒も飲めるのが基本)、バリスタさんに「お好きなんですかー」と声を掛けられる。隣で同じく飲んでた方もかなりの好きモノらしく、酒瓶の話からチンザノやらフェルネット・ブランカ等定番酒の古製法版のネタでちょいと盛り上がる。……この御仁、チンザノ・アンティカ・フォーミュラをまだ置いている店を知っているらしい。かつてLe Zincで瓶の底にあった一杯を飲ませてもらって以来、とんとお目に掛かれないレアな(そして旨い)酒である。ぐえー、ある所にはあるんだなぁ、まだ。

茶好きの昼下がり

締めにカフェを一杯引っ掛け、13時の頃合をみて離脱。ティーファクトリーは見事に潮が引くように空いており、「絶対この時間に来たほうがお茶が美味しく入ってます(笑)」というマスターの声と共にゆっくりと紅茶とドライカレーを楽しむ。ここのドライカレーは枝豆が入ってるのが特徴的で、これまたお茶に負けず劣らず旨い。相変わらずのマスターと茶好き雑談をだらりとしながら、家で入れるとどうしても嫌な渋みが出てしまうウヴァを啜る。そういえば今度ウヴァのサンプルがどさっと届くそうで、テイスティング会でもやったら楽しいか、なんて話も出ていた。ホント、店長の人柄といい茶の品質といい、茶好きにはたまらない店である、ここは。

食品街のトラップ

昼飯後は新宿の馴染みの店で散髪、夏コミ対策に短めにしてもらう:) そのまま地下伝いに伊勢丹まで移動し(新宿はこの地下移動で結構あちこちいけるから暑い夏には助かる)、食品街を目的もなくふらふらと。本当はピエール・エルメのマカロンでも買って帰りたかったが、今日はまだしばらく帰れないのでとても保冷剤が持たない。何かここでは毎度同じような罠にはまっている気がする(苦笑)。更に地下のBPQCで歩き疲れた身体にアップルサイダーを投入し、もう一度食品街に戻ったところで全国物産展のようなものに遭遇する。……遭遇というか、漂ってくる何か反則級の匂いに引っ掛かったという方が正しい。匂いの元を探してみれば、それは秋田の焼きはたはた寿司。なんとその場で焼き上げてやがりまして、一日しか持たないし今夜は外食の予定だしいつ食うんだよ俺は、という脳内の抵抗も虚しく、衝動的に一本お買い上げ。ちなみに帰宅後&翌朝に分けて食ったのだけど、確かに極上でしたよこれは。秋田県民羨ましす。

香りの楽しみ

その後はメンズ館に移動し、前々から新しいのが欲しかったベルトを購入。またフレグランスエリアに立ち寄り、「Blenheim Bouquet」以来お気に入りのペンハリガンに赴き、前々から気になっていた別の香りを少々試してみた。本来イタリアフランス系、しかもスパイス・オリエンタル風の複雑な香りを好む如星にしては珍しく、イギリス系、しかもトップがシトラスなブレナム・ブーケに惚れ込んで普段使いにしてるのだけど、流石は歴史ある香り屋、シトラスと言っても今風の安っぽさは無いし、基調にスパイスやムスクがあるから好みにも合っている。まぁ、チャーチルの香水というフレーズに惹かれた面も否定できないのだが(笑)。ちなみに今回試してみたのは「English Fern」という、ファーン=シダという名が表す通りの「草めいた青臭さ」が漂うフレグランスなのだけど、その後ミドル以降は結構、いやかなり甘い香りと判明した。これも嫌いな香りじゃないけど、ちょっと夏には向かないかも。緑系の香りは夏向きかと思ったんだけどねー。

ちなみにずっと肌着入れのポプリに愛用していたLorenzo Villoresi、香水系の扱いは増えたのにポプリやルームフレグランスはどんどん減っていて、遂にポプリもラベンダーだけになってしまっていた。やっぱり日本人には馴染みが無い代物だからかねぇ……。残念。

そしてそれから

「狼と香辛料」5巻の早売りを求めてジュンク堂に向かうも発見できず。今朝の横浜有隣堂でもなかったし……。これで横浜に戻って虎や森にも無かったら困る困る。いや困るっていうか「くふ。ぬしはそんなに急いでわっちの尻尾に敷かれたいか」なんてホロの声が聞こえてきそうだが、今本気で二次創作小説を書こうかとも思ってるマイブーム作品でもあり、一刻も早く続きを読んでおきたいのジャヨー。……と言っていたら横浜虎で無事確保。

ついでに衝動的に801ちゃん2巻目も買ってしまったが、こっちは前巻と変わらず「ふーん」と流して終わり。わかってたのに買うなんて……。元々オタク内輪ネタが余り好きじゃないというのもあるけど、一方ドージンワークでも思ったのだが、この辺が余りに日常過ぎて、「あるある」と盛り上がることすらできない状態ではないかとも推測できる。ううむ(苦笑)

で、横浜に移動したのはぶどう氏と原稿完了の打ち上げのため。これは別途記事をあげることにしよう。

今日の一滴="−−−−" (2007/08/07)

【2007-08-10-金】

一つの南インド料理店との別れ

如星が長年密かに馴染みにしていた南インド料理屋の店長さんが、先月26日に亡くなられていたことを昨日になって知る。先月中は修羅場等ですっかり不義理をしていて、原稿が上がったら食いに行こうと思っていた矢先の話であった。店のほうも本日10日で閉めてしまうそうで、今月は既にランチ営業しかしていなかったらしい。

先月頭にスパイス補給と称して行った時には既に店長の姿が見当たらず、また実は味も微妙で、フロアも今ひとつ回っていない感があったのを覚えている。店長が一日いないぐらいで回らない店ではないので、急な不在と何かキッチンでのミスでも重なったかなー、なんて考えていたのだが、既にあの頃闘病中だったということだ。……胃癌で倒れ、その時点で店を一旦閉める事は半ば決めていたらしい。だがそれは本人が厨房に立てないが故の「引退」予定であったのだが、その後脳に転移して文字通りの急逝だったそうだ。

──52歳の若さだったという。一応常連として顔馴染みで、初老の人当たりの良い方という印象だったのだが、まさかまだ50代だったとは。また温和といえどインド料理に対する激しい情熱をお持ちの方で、その食に関する談義はちょくちょく楽しく聞かせてもらったものだった。ラッサム等、北の「カレー」よりも酸味の利いた南インドの料理を熱く語り、日本では育たないカレーリーフを沖縄で本格的に栽培を試み(沖縄でも寒すぎるそうだ)、一方で日本の旬の素材を都度取り入れ、見事にインド料理にしてしまう。スイーツも本格的で、如星はこの店以外でまともなクルフィ──インドのアイス風冷菓子を食べたことがない(とある有名店でクルフィを頼み、単なるシャーベットモドキが出てきた時には驚きを通り越して哀しくなったものだ)。絶妙なマサラチャイ、インドの甘味の真骨頂は「焦がさず煮返せ」にあると教えてくれた店長。一つの食を追う人間の姿勢、ってモノを身近に見せてくれていた方だったのだが……店の存在共々、本当に惜しい方、惜しい店を亡くしてしまった。ご冥福を心からお祈りする。

今日は半日休暇を取ってあったので、最終日の前日に知ったという唯一の救いを形にすべく、最後のランチへと向かう。店は平日昼だというのにお客さんでひっきりなしで、予約客も結構いた模様。実際1時間近くの待ち時間が発生しており、ランチと行っても午後2時、3時と営業は続けていたようで、地方にありながら遠方からもここお目当ての客が来るという実力を、最後まで見せつけていた。店長の件は公式には出していなかったけど、やはり伝手で知ってくる人はいるし、また常連には(如星のように)スタッフさんが事情を教えてくれていた。

メニューの方は既に色々品切れが出ており、名物のナンやクルフィーは味わえなかったけど、基本のチキンカレーと、それから南方特有のトマトとニンニクを利かせたラッサムスープをいただく。……しみじみ旨い。定番のスパイスを効かせたアイスクリームも亡くなっていたけど、普通のバニラアイスにインドの濃厚な「匂い」漂う非養蜂天然蜂蜜を掛けてもらい、定番の残り香を味わう。最後にはチャイではなくインディアンコーヒーを頼み、キッチリと一つの料理として満足させていただいた。……まったく、手の入った料理でなければ店長なしでもここまで再現はできるってことなのだが──それでも店を閉めるという決断は、やはりそれだけでは足りないということなのだろう。ただ、一応何らかの形での再開は考えているらしい。決まったら一報がもらえるよう連絡先を残し、その細い繋がりだけを残して如星のこの店との付き合いは終わりを告げた。

本当に、少々間が開いてしまった時に限ってこういうことがあるもんなんだと悔やまれる。結構がっくり来てます……。

今日の一滴="カフェ:インディアンコーヒー" (2007/08/10)


 
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