VERBA VOLANT, SCRIPTA MANENT.
この数日、まったく文章を書く気になれないでいたのだが、それは密度が濃く、かつ落ち着いたインプットが足りないからでは、という考えが湧いてきた。のんべんだらりとWebを突付いたりIRCで駄弁っているだけで、何かをしている気分にはなれてしまうのが最大の問題だろう、とも。というわけで、ちょっとこの日の夜はIRCを落とし、タブブラウザも落とし、静かな夜を過ごしてみることにした。
No IRC、って方は普段IRCを使ってない人には理解しがたいモノだろうけど、そもそもIRCってのは他には替えられない優れたコミュニケーションチャネルだ。会話が流れていたりいなかったりする周波数帯にいくつも繋いでおいて、興味を惹く会話が展開されたら会話に噛んでいく、発信可能なラジオみたいなスタイル。メッセや携帯メールのような即応性は求められないし、全ての会話に参加を求められてるわけじゃないから張り付いている必要もない。これだけ色んなコミュニケーションメディアが出てきても、他にあまり見られない常駐型のチャネルなのだ。
とは言え、もう片方のNo Browserと並べて書かれている時点で想像がつくかもしれないが、IRCというのはブラウザでダラダラとblogなり日記なりを読み続ける行為と少々似ている。大した目的も無く、指を動かすと画面に流れてくるテキストをぼんやりと追い、次のテキストの呼び水を探し続けるだけで過ぎていく時間。加えてIRCもブラウザも、ダラダラ系専用メディアなわけではなく、生活系のメディアが混在している辺りが悩ましい。IRCにも身内の連絡用チャネルはあるし、ブラウザにはスケジューラも開かれている。なくしてしまええ!と単純には行かないわけだ。
とは言えとは言え、まぁ一晩ぐらい無くたって平気だろう、という程度のものではある。No Networkではないからメールは見るし。ちょちょいと必要方面にだけ声を掛けておいてから、無線封鎖と相成った。
……ま、これは悪くないね実際。ついつい読み残してた雑誌の続きを眺めたり、積んでしまったティアでの同人誌に読み耽ったり。あ、ちなみに元々テレビは部屋に置いてすらない人間だ。ついでに音楽を掛けるのもやめておく。旨い紅茶をいれ、茶が尽きたら甘い胡椒系の香りを焚いたりして、ベッドに寝転がって静かに本を読む。こういう時背中に掛けるのは羽毛布団に尽きる──毛布やタオルケットなど、背中に乗っている感があるのはダメだ。もふっとした中に潜りこんでいて重さを感じないのがいい。何より驚くのは、こうしているととても時間が長く感じられる、ということ。それは倦んだ結果の長さではなく、これだけ読み耽ってもまだ時間がある、と感じる類の嬉しさだ。
そういえばこの無線封鎖を思い立ったとき、最も封鎖破りの端緒になるのではと危惧したのが「ぐぐれない」ということだった。しかしまぁこれも実際やってみれば、目的の明確な調べ物以外でぐぐる時ってのは、IRCなり日記なりでふと目にしたキーワードを展開するために使う時ぐらいだと気がついた。誤解しないで欲しいのだが、このキーワード展開ツールとしてのGoogleは偉大なモンで、その恩恵を否定してるわけではないので念のため。
ともあれ、今こうして日記を書いている以上、既に無線封鎖は解除されているわけだけど、この手の封鎖は時折心がけてやるべきだな、と改めてしみじみ思った。実際落ち着いて周囲に影響されず時間を過ごすことで、これぐらいな文章を書く気にはなったのだから:)
今日の一滴="−−−−" (2007/11/29)